日本最速・田中希実が「怖いな」と警戒 同僚ライバル・後藤夢が生んだ抜群の相乗効果
後藤夢が田中希実に受けた影響「今は世界大会を近くに感じている」
田中が想像した通り、後藤も孤独と闘っていた。普段から少しネガティブな一面があり、考えすぎてしまうところがある。グルグルと思考が駆け巡るが、裏を返せばそれだけ自分を理解できており、吹っ切れる一歩手前。「考えることをやめたら?」。そんなスタッフの言葉で心が晴れた。「浮き沈みがあって気持ちも左右される。最近は不安もあって、大会直前にコーチやマネージャーから声をかけてもらって吹っ切れた」と前を向けた。
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今季は記録も、順位も確かな成長を見せている。要因として「大学では勉強もしていたけど、今年から一社会人として陸上に専念できている」と説明。もう一つ、日本最速のチームメートに受けた影響があった。
「去年は東京五輪があったけど、そこへの力は全然ない。走っていても目標が明確ではなかった。今は世界大会を近くに感じていて、『田中の背中を見て、私も』と目標を持つことができて視野が広がりました」
力を引き上げてくれたチームメート。田中も同じ想いだ。
「後藤選手は中学の時からライバルで負けたくない存在。高校でチームメートになって、友だちでもある。それぞれの性格があって、それぞれの世界観があって、ずっと一緒にいるけど適度な距離感がある。一言では言い表せない存在です。今後、後藤選手ともっといろんな経験を積んでいくことで自分自身も成長できるんじゃないかなと思います」
表彰式で並び、一緒にメダルを掲げながら笑った。常に高め合い、相乗効果を生む若きランナーたち。近い将来、メダルの色が逆転する日が来るかもしれない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)