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「トルシエさんの考えは違った」 稲本潤一、20年後の今も抱く日韓W杯トルコ戦の悔恨

中山雅史や秋田豊がベンチで見せた姿勢は「簡単なことじゃない」

 稲本は、中田英寿とともにフリーマン的な役割を果たしていたようにも見える。それを裏付けるように、最終ラインや戸田から「戻ってこい」と言われたことは一度もなかった。

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「ラインコントロールの時や守備の時、『もっと後ろに下がれ』とか『もっと慎重に』とか言われたことがないです。ロシア戦は後半の早い時間に点が取れたので、ある程度、引いた戦いになるのはしょうがないし、普通、そうなるでしょ。それでも前に行くことを常に考えていたので、その頃の自分はそこまでチーム全体のことを深く考えていなかったんやと思います」

 もう一つ、稲本が自分のプレーに集中することができたのは、ベテラン枠で入った中山雅史、秋田豊の存在が大きいと思っていた。

「チームを盛り上げてくれたのはもちろんですけど、選手へのフォローですよね。ワールドカップなので、選手は試合に出たいじゃないですか。そういう気持ちはあるけど、それを表に出して見せないようにしていたのは、ゴンさん(中山)とかがやってくれたのかなと思います。それって簡単なことじゃないし、チームの一体感を高める意味でもすごく重要なんですよ。この時のゴンさんたちのような存在の重要性は、ドイツ(W杯)の時、ほんまに痛感したからね」

 中山たちの雰囲気作りに勝利が重なり、日本は好調を維持。ロシア戦に続き、チュニジア戦(2-0)も勝利し、日本はグループリーグ首位でベスト16に進んだ。

 決勝トーナメント1回戦の相手は、トルコだった。

 日本は前半12分に失点し、序盤から苦しい展開に追い込まれたが、時間は十分にあった。だが、引いてカウンター狙いのトルコに対して、日本はボールを持ちながら隙を窺うがなかなか崩せない。前半があっという間に終わり、稲本はそこで市川大祐との交代を告げられた。

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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