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井上尚弥も被弾、なぜドネアの左フックは当たるのか 警戒しても「見えない」理由

ボクシングの元WBC世界ライトフライ級チャンピオンである木村悠氏が、ボクサー視点から競技の魅力や奥深さを伝える連載「元世界王者のボクシング解体新書」。今回は6月7日にさいたまスーパーアリーナで開催される、WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)とWBC同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との3団体王座統一戦(Amazon プライム・ビデオで独占生配信)に注目している。

井上戦でも注目、ノニト・ドネアの左フックを解説【写真:Getty Images】
井上戦でも注目、ノニト・ドネアの左フックを解説【写真:Getty Images】

連載「元世界王者のボクシング解体新書」:井上戦でも注目、ドネアの左フックを解説

 ボクシングの元WBC世界ライトフライ級チャンピオンである木村悠氏が、ボクサー視点から競技の魅力や奥深さを伝える連載「元世界王者のボクシング解体新書」。今回は6月7日にさいたまスーパーアリーナで開催される、WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)とWBC同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との3団体王座統一戦(Amazon プライム・ビデオで独占生配信)に注目している。

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「フィリピンの閃光」の異名を持つドネア最大の武器が強打の左フック。数々の強敵を葬り去ってきた一撃必殺のパンチだ。対峙する選手は最大級の警戒を欠かさない。それでも、毎試合のように直撃させられるのはなぜなのか。木村氏は、井上にとって最も脅威となるドネアの左フックについて「視界から消えた瞬間、死角から飛んでくる」と分析。2年7か月ぶりとなる再戦でも、この攻防が勝敗を分けるポイントになるという。

 ◇ ◇ ◇

 ボクシング3団体統一戦が6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われ、WBA&IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)が、WBC世界同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)と対戦する。

 両者は2019年11月にWBSSトーナメントの決勝戦で対戦している。その試合では、井上が3-0の判定で勝利した。

 PFPランキングでも上位に名を連ねる井上と、すでにピークを過ぎたと言われているドネアの対戦ということもあり、当初は井上の圧勝が予想されていた。

 しかし、2ラウンドにドネアが放った左フックが顔面を切り裂き、井上はピンチに陥る。終盤でも衰えないドネアの猛攻で、井上が最も苦戦した試合と言っても過言ではない。

 その後、ドネアはWBC王者のノルディー・ウーバーリ、WBC暫定王者のレイマート・ガバリョをともにKOで下し、再び今回の対戦に辿り着いた。

 今年で40歳になるが、強さに衰えは見えない。ドネアの武器は左フック、ボクシングの中で一番KOが生まれやすいパンチだ。

 ドネアの左フックは、相手がパンチを放ったタイミングに合わせて打ち込んでくるため、ガードができない。相手に隙を見せ、パンチを誘い、カウンターを放つ。ノーガードの状態で打ち込まれるパンチほど恐ろしいものはない。

 また、ドネアの左フックは正面ではなく、死角から飛んでくるので見えにくい。ドネアの左腕のガードが下がり、視界から消えた瞬間、死角からフックが飛んでくる。

 私も経験があるが、強いパンチよりも見えないパンチのほうが効いてしまう。想定外のタイミングで来るパンチは読みづらく、もらってしまう。

 さらに、ドネアは腕の長さを活かし、弧を描きながら角度をつけて打ち込んでくるため、一層見えにくくなる。

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木村 悠

1983年生まれ。大学卒業後の2006年にプロデビューし、商社に勤めながら戦う異色の「商社マンボクサー」として注目を集める。2014年に日本ライトフライ級王座を獲得すると、2015年11月には世界初挑戦で第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオンとなった。2016年の現役引退後は、株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動、社員研修、ダイエット事業など多方面で活躍。2019年から『オンラインジム』をオープンすると、2021年7月には初の著書『ザ・ラストダイエット』(集英社)を上梓した。

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