宗像サニックス「永遠のノーサイド」 28年の歴史に刻まれた“非エリート集団”の団結力
今季限りでの活動休止を発表していたラグビー・リーグワン3部の宗像サニックスブルースが8日、豊田自動織機シャトルズ愛知との順位決定戦に臨み、29-55で敗れて28年の歴史に幕を下ろした。事実上の廃部という悲しい現実を前に、屈強な男たちはどんな思いで最後の戦いに臨んだのか。前編では松園正隆監督や選手の言葉から、名古屋でのラストマッチでの姿を追った。(取材・文=吉田 宏)
宗像サニックスブルース「最後の戦い」前編、別れの時まで貫いた冒険心
今季限りでの活動休止を発表していたラグビー・リーグワン3部の宗像サニックスブルースが8日、豊田自動織機シャトルズ愛知との順位決定戦に臨み、29-55で敗れて28年の歴史に幕を下ろした。事実上の廃部という悲しい現実を前に、屈強な男たちはどんな思いで最後の戦いに臨んだのか。前編では松園正隆監督や選手の言葉から、名古屋でのラストマッチでの姿を追った。(取材・文=吉田 宏)
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名古屋市中東部にある瑞穂ラグビー場の芝に、不屈の男たちの長い影が一塊になった。「悔いはない」は、どこかに嘘がある。でも、出し切ったという思いに胸を張った。宗像サニックスブルースにとっての永遠のノーサイドが訪れた。
29-55。
スコアボードの数字がブルース最後の戦いを記録する。数字は動かしようのない事実だが、円陣を組んだ敗者の胸の中に渦巻く寂しさや悔恨、そしてチームへの底なしの愛情という記憶は計れない。28年の挑戦は、彼ららしい悔しさの中で幕を閉じた。
「どうしても勝ちたいという気持ちで、1週間いい準備をして試合に臨みました。いろいろな難しい状況のなかで、選手が最後まで諦めずに戦う姿を見せてくれたことは満足しています。負けたことは残念ですが、これもサニックスの324試合の1つの結果として残るものだと思っています。これも経験として、全員が次のいい方向へ前向きに進めればいいなと思っています」
松園正隆監督が、夕暮れが迫るスタジアムに残るファンへ呼びかけるように挨拶に立った。前週、地元・宗像でのラストマッチ後は「書いたものを読めば感情はある程度抑えられるかなと思ったが、読んでいるなかで昔のことを思い出してしまった」と何度も声を詰まらせたが、この日は澱みなく自分自身の、そしてチームの思いをファンに伝えた。
ゲームは、すでにリーグワン・ディビジョン3の1位、自動昇格を確定していた豊田自動織機シャトルズ愛知が主導権を握る展開で終始した。だが、接点で押し込まれても果敢にボールを動かし、攻め続けた。後半4分からの3連続トライで24-29と詰め寄りながら最後は26点差をつけられたのも、リスクを恐れずトライを狙ったミスから切り返された結果だ。その冒険心に満ちたラグビーを、1698人の観衆が瞼に焼き付けた。
この試合の勝敗で変わるものは何もなかったシャトルズも、ブルースの挑戦を受けるようにボールを展開し続け、今季の持ち味だった大きくボールを外まで動かして相手防御を崩すアタックで、去り行くライバルを容赦なく叩きのめした。80分を経過したホーンが鳴っても、もう2度と対戦できないライバルとの試合を惜しむようにゲームを切らずに攻め続けた。