上田桃子、35歳でも輝く存在感の背景 大スランプの6年前、名伯楽に教えられた気と技
「何をやってもダメ」で王貞治氏を育てた荒川博氏のもとへ
ただ、翌14年もスランプ気味で、地元熊本県で開催の試合に予選落ち。泣いている姿を目にした辻村氏は、「左右に体重をゆするスイングになっているから、体の正面で球をとらえられていない」とアドバイスした。それでショットが修正され、上田は辻村氏にコーチ契約を依頼した。
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二人三脚で歩き出し、上田は同年に2勝して賞金ランク10位。15年に優勝はなかったが、賞金ランク7位で「完全復活」を印象付けた。しかし、16年になると深刻なスランプに。辻村氏も「何をやってもダメ」な状態に陥った。
「2人でスランプだったので、違う方向から元気づけてくれる人がほしい状況でした。そして、週刊『ゴルフダイジェスト』で連載『1日1000回クラブを振れ』を書かれていた荒川博先生を紹介してもらいました」
荒川氏は元プロ野球選手で引退後は、コーチ、監督を歴任。王貞治氏に一本足打法を教えた名伯楽で知られる。また、合気道6段でもあり、晩年は「気を沸き出させて打つ」の教えを基にゴルファーも指導していた。
2人が初めて訪れた日、荒川氏は上田に「構えてみなさい」と言うと、右の脇腹を軽くプッシュ。よろける上田を見ると、自身は野球の構えを披露し、辻村氏に体を押させたという。そして、ビクともしない荒川氏の「気の入った構え」を目にし、その後も時間を見つけては、2人で荒川氏のもとを訪ねたという。
「私は先生に『もっと勉強しろ。お前も練習するんだよ』と言われ、桃子と並んで練習するようになりました。ダウンスイング、重心の置き方、呼吸の仕方なども習いましたが、『お前たちは形のことしか目に見えないのか。目で見えているものばかりを追いかけていると、人生損をするぞ』と言われました。その時、僕は体に電気が走るほどの衝撃を受けました」
スイングは良くなっている手応えはあったが、理想のショットには届かない。その理由を荒川氏は「スイングに気持ちが入っていない。心が良くなっていないからだ」と指摘し、呼吸を止めての素振り、目隠しをしてのショットといった特殊な練習を課したという。
「僕は、先生から足元にトスされたゴルフボールを地面スレスレで打つ練習をするようになりました。最初は空振り続きでしたが、毎日のようにやっていたら、次第に当たるようになって、最後には(練習場の)グリーンに乗りました。それと構えとは全く違う方向を指され、『あそこに打て』というのもありました。『あそこに気を通せば、どこ向いていてもあそこに飛ぶだろ』ということでした。つまり、どれだけ集中力を高めてスイングをするかということです」