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「次の久保建英」を生み出せる? 型に“はめられない”育成、名門に見る成功の極意とは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は久保建英やリオネル・メッシを例に、サッカー選手を育てる難しさについて考察。たとえ優秀な指導者が精巧に作られた育成メソッドを基に教えても、成功の保証は何一つないとしている。

久保建英など、世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか【写真:Getty Images】
久保建英など、世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:バルサも育てられない「次のメッシ」

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は久保建英やリオネル・メッシを例に、サッカー選手を育てる難しさについて考察。たとえ優秀な指導者が精巧に作られた育成メソッドを基に教えても、成功の保証は何一つないとしている。

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「次の久保建英を育てよう!」

 そんな見出しの広告を見た覚えがある。イベント企画の一つか、壮大なプロジェクトか――中身は分からないが、目を引くタイトルと言えるだろう。

 しかし、「もう1人の久保」を作るつもりなら、相当な覚悟といくつかの幸運が必要になる。

 久保に限らず、有力なプロサッカー選手と同等の選手を生み出すのは簡単ではない。それはどれだけ最新で効率性の高いトレーニングを用いたとしても、その選手の技量や力量だけではなし得ないからである。例えば性格も大きく作用し、集中力が続かず、飽きっぽいかもしれないし、独りよがりで傲慢で自分勝手かもしれない。

 何より、サッカーはあくまで集団の中で切磋琢磨される。1人の選手を久保のようにトレーニングしたとしても、ほとんど意味はない。久保はFCバルセロナ(バルサ)の下部組織ラ・マシア時代、アンス・ファティ、ニコ・ゴンサレスのように、今や10代でバルサのレギュラーになる逸材との日々を過ごすことによって、1人の選手として邂逅を得たのだ。

 平たく言えば、簡単に選手は育てられない。

 バルサは、13歳だったアルゼンチン人のリオネル・メッシをクラブに加入させている。

「Desborde y Gol」(崩しとゴール)

 必要とされる条件を満たしていた。サイドアタッカーとして機敏でボールを持ち出すスピードとテクニックを併せ持ち、ゴールに結びつけられる。チームの育成理念に従って手に入れた選手だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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