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“町長”は慶大ラグビー部元主将 仮想空間「丸の内15丁目」が“にわか”の心を掴む理由

「にわか」ファンを取り込み生み出した熱

 この言葉は、株式会社ほぼ日などを通じた様々な仕掛けで、日常をより良く変えるための提案をするコピーライターの糸井重里さんが使い始めた。2015年W杯の日本-南アフリカを見て魅了された糸井さんは、自らも「にわか」としてラグビーに接するなかで、より多くの人たちを引き込むためのワードとして、その重要さを捉えていた。

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「にわか」を別の言葉で表現すれば浮遊層であり、選挙に例えれば浮動票だ。この層こそが、日本国民の大多数であり、社会的なムーブメントを起こすために軽視できないことは明らかだ。この“多数”を引き込むことが、2019年のラグビーW杯での大きなうねりを生む要因になったのは間違いない。

 この「にわか」が入りやすい間口を作るために、高田たちは相反する理念を持って、プロジェクトを押し進めた。

「いい選択だったのは、『丸の内15丁目プロジェクト』は、その名のとおり、ラグビーと言わなかったこと。ラグビーなんだけど、それを前面に押し出すと間口がどうしてもラグビーになってしまう。なのでラグビーと言わずに、いろいろな人たちに入りやすい場所作りという視点で取り組んだことが、すごくいいコンセプトでした。例えば、ラグビー好きじゃない人でも、なんの気なしに入って来られるような雰囲気の中で、レストランで食べてみるとそれがラガー丼だったみたいな。そういう間口って、小さい話ですけれど結構大事だなと実感していた。ラグビー界は若干入りづらいところはあるので、それを上手くにわかファンの方が入りたいと思える場所作りをすることで、上手くはまったのかなと思います」

 W杯日本大会までのプロジェクトの集大成は、大会後に丸の内で開催された日本代表メンバーによるパレードだった。2019年12月11日に、丸の内仲通りで行われたパレードには5万人のファンが押し寄せた。この成功に、三菱地所もさらにラグビーとの繋がりの強化に舵を切った。

「W杯日本大会の盛り上がりを受けて、三菱地所は日本代表のスポンサーになりました。私としても、そういう取り組みがもし続けられるなら続けたいですという話をしましたし、会社側でも、それは続けるべきじゃないかということだった。19年にあそこまでの盛り上がりができたからもう一回やれというのも大変ですけれど、スポーツ、ラグビーというコンテンツを活用して、会社の本業なり、コーポレートブランドに繋げていくことを理解してもらえたのかなと思います」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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