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宇野昌磨ら生んだ「フィギュア王国」の今 流出する才能、“愛知復権”への試行錯誤

愛知復権へ、優れた指導者が多くいる点が武器に

 4年前に取材した際、久野さんは「トップ選手を間近に見て学べる環境と、優れたコーチがたくさんいること」が愛知の強さを支える要因だと指摘していたが、「これまで愛知が持っていた良さ。アカデミーはおそらく、それ以上のものを持っています」と語る。

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 選手が最も伸びるのは、良いお手本がいて、ライバルもいるという環境だ。

「伊藤みどりさんを見ながら育った選手がいて、その選手たちをまた次の選手たちが見て。そうやって上手く選手がつながってきたのが愛知県の強みでした。小さい頃から世界で活躍する選手が隣にいて、一日どんな練習をしているのかを常に見ることができる。言葉で教えるよりも、ずっと上達が早いんです。アカデミーは今、選手がどんどんつながっていっている。これからもっと強くなっていくと思います」

 逆に愛知は、トップ選手の多くが大学のリンクで練習しているため、小さい子たちがトップ選手の練習を見る機会が減ってきている。

「トップ選手の環境はどんどん良くなっていますが、そこに行くまでの過程が次の選手を育てる。以前はふと横を見ればトップ選手がいたんですけど、今はそういう機会は強化合宿などに限られている。そこは悩ましいところですね。

 現状でアカデミーに対抗するには、愛知にもアカデミーを作らない限りは難しい。ただ、それはすぐにできることではないし、連盟だけでもできない。かといって食らいついていかないと、選手が流れていってしまう状況が続いてしまうので、今シーズンから強化策を見直すことにしました」

 愛知の良さを生かし、東西のアカデミーから刺激を受けながら、久野さんは再び愛知の時代を築くために試行錯誤を続ける。

「環境」では一歩譲ったとしても、優れた指導者という点では負けていない自負がある。伊藤みどり、浅田真央、宇野昌磨らを育てた山田満知子コーチと樋口美穂子コーチ、安藤美姫を指導した門奈裕子コーチは今も健在。加えて、2008年にはソルトレークシティ五輪代表の恩田美栄がクラブを立ち上げた。今季引退した松田悠良が邦和SCでアシスタントコーチを始め、新たな風を吹き込んでいる。「若い先生たちがある程度自分の指導方法を確立してくれば、選手はまた育ってくると思います」と久野さんも期待を寄せる。

 習い事としてフィギュアスケートが定着している愛知では、競技人口がずっと変わっていないのはプラス要素だ。「有望な選手はどんどん出てきているので途切れることはないが、ノービスBの選手強化に重点を置き、育てていく必要がある」と力を込める。

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山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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