陸上・田中希実が持つ「強いランナー」の定義 今、明かす感動を呼んだ五輪決勝の真実
「強いランナー」の例に挙げた日本人レジェンドとは「記録がなくても憧れてしまう」
田中が「強いランナー」の例に挙げたのは、福士加代子(ワコール)だ。五輪は16年リオまで4大会連続出場。かつては複数のトラック種目で日本記録を打ち立て、記録でも、発言でも、走りでもファンを魅了してきた。
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そんなレジェンドの3000メートル日本記録を18年ぶりに破ったのが田中だった。今月30日の大阪ハーフマラソンでラストランを迎える39歳について「あの姿勢に凄く惹かれます。もともとは速い、強いことで注目されていたと思いますが、今はトラック種目の日本記録を全て抜かれても周りは憧れてしまう」と目を輝かせる。
「強く惹かれるものを持っている方。人を惹きつける何かが大事」。自身も、その「何か」を垣間見せたのが五輪だった。
「大きな舞台では無我夢中になれる。オリンピックだからこそ、その心境に至ったと思います。アスリートとして最高の形って、余計なことを考えず、ただただチャレンジ精神を持って楽しむことなんじゃないかなと。オリンピックでそれを見つけられた。今後はその再現性を高めることが大事。タイムを出す過程で何か他にはないことをやるとか、唯一無二の選手になりたいと思います」
「無我夢中」が最大限の結果を生み、人の心にインパクトを与えた。今年は7月に世界選手権(米国)を控える。それもまた「強いランナー」になるまでのピースに過ぎない。人の胸を打つその走りには、無限の可能性が広がっている。
(第2回「記録との向き合い方」は29日掲載予定)
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)