「東京五輪で落下してよかった」 あの悲劇から92日、内村航平がやっと肯定できた理由
「体操とは」という質問、迷いなく返した答えとは
落下から92日後、世界体操決勝は6位に終わった。でも、誰よりも「魅せた」という事実がある。
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「東京五輪は出たいというのもあったけど、自分の中では結果が全て。五輪で金メダルを獲るのが最大の目標で、結果にもこだわってやるのは当然のことだと思っていた。それが予選落ち。でも、あれがないと今日の着地に繋がらない。こんな死に物狂いで予選と決勝をやれていない。今日のためにあれはあったのかなと」
欲を言えばキリがない。東京五輪だって個人総合で出たかった。そこでの3連覇、団体金メダル……。完璧主義者には底なしの望みがある。それでも、どれも叶わない現状を受け入れ、がむしゃらになった。
「会心の一撃」と表現した着地。東京五輪の落下からその一瞬への道は繋がっていた。だから、悲劇を肯定できた。
なぜ体操をしているのか、競技を通じて何を表現したいのか、一つひとつの質問に丁寧に答えていく。会見で感じたのは、表面的な言葉を並べるのではなく、“自分の言葉で本心を”という姿勢。競技人生の晩年にいる今、「体操とは」という質問には迷いなく返した。
「相変わらず、僕にとって『最高』以外にない。自分が自分であることを唯一証明できるものです」
かつてほど「完璧」ではないかもしれない。でも、泥臭く表現する体操も十二分にカッコよかった。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)