年間100件の社会貢献活動 Bリーグ王者・千葉ジェッツが「JETS ASSIST」に懸ける思い
2019年に始動、目標は「地域を支えていく存在になる」
こうして基盤が整ったJETS ASSISTの活動理念は、経済的、社会的に恵まれない境遇の子供たちや、日々、苦しい思いをしている人々に対して、「生き甲斐をもって、生きていけるよう支援をする」。その上で、Planet(地球を守る)、People(支援が必要な人々人に手を差し伸べる)、Peace(平和、安全、安心)からなる「オフコートの3P」という考え方を据え、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指すことになった。自治体、NPO法人とも連携。地域課題の現状をリサーチし、そこにアプローチすることを特徴にした。
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「我々だけの取り組みになると、どうしてもスポーツの普及にフォーカスしてしまいますが、地域の皆様に今、困っていることをヒアリングして課題解決することが一番の目的なので、(スポンサー、自治体、NPO法人などに)ご一緒してもらっています。結果、それがマルチな活動につながっています」(田村社長)
JETS ASSISTで、これまで手掛けた活動は多岐にわたる。以下は代表的な例だ。
●「思い出を未来につなぐ」絆Tシャツプロジェクト
プラスチックごみ問題の深刻化を受け、「使い捨てからリサイクルへ」と意識変革を推進するため、企画された活動。ホームゲームの会場に来場した観客から回収した古着および、選手から回収した古着をリサイクルし、「絆Tシャツ」と題した新Tシャツに生まれ変わらせるというもの。「絆Tシャツ」は一般販売し、売り上げの一部は、新型コロナウイルスと闘っている医療従事者に寄付される。19年10月のホームゲーム時に初めて実施された際には、2日間で来場者約700人の協力があり、重さ100キログラム以上の古着Tシャツを回収。20年10月に行われたホームゲーム時に実施された際には、2日間で約400着の古着Tシャツが集まった。
●フードドライブプロジェクト
自宅にある食品で寄付できるものを支援が必要な人たちに届けてもらうための回収イベント。日本では現在、7人に1人、ひとり親世帯の子供は半数以上が貧困状態にあるとされ、船橋市でも子供たちが食に不安を抱えて生活している家庭が存在している。その背景を踏まえたフードバンクふなばしと協業した取り組み。集められた食料は、フードバンクふなばしと船橋市の連携で、支援が必要な家庭に届けられる。今年5月のホームゲーム時には2日間で来場者300人から、総重量280kgの食品が寄せられた。
●ブックドライブプロジェクト
本を寄贈してもらい、本が必要な人や新しい読み手に届けるプロジェクト。NBAでも、カンファレンス優勝チームは必ず実施していた活動で、千葉ジェッツふなばしは、コロナ禍で苦しい状況にある子供たちや青少年に応援を届けるため、ホームゲーム開催時は、来場者に「元気になれる本」や「勇気をもらえる本」の持参を呼びかけ、400冊以上の本を集めた。そして、千葉県内の公立高4校に計240冊を寄贈。それぞれには、千葉ジェッツふなばしの公式マスコットキャラクター「ジャンボくん」のシールが貼られている。
●交通安全のためのランドセルカバーの配布
船橋市の子供たちの交通安全に対する意識の向上とランドセルカバーの着用による交通事故防止等を目的とし、パートナー企業のXFLAG、船橋東警察署、交通安全協会の賛同のもとに実現した活動。今年4月、船橋東署管内にある29の船橋市立小の新1年生約3000人に配布された。ランドセルカバーには「ジャンボくん」が手を挙げ、横断歩道を渡るデザインが施され、交通事故防止に寄与している。
●バスケットゴールセット寄贈
パートナー企業であるXFLAGのサポートを受け、船橋市内の150を数える幼稚園・保育園を対象に、千葉ジェッツふなばしオリジナルのミニバスケットゴールセット(ミニバスケットゴール&ボール)を寄贈。「千葉県をバスケットボール王国にする」というビジョンを基に、コロナ禍で問題になった子供たちの運動不足、体力低下解消への寄与を目指している。さらには「元気や勇気を与えたい」「バスケットボールや千葉ジェッツふなばしをもっと好きになってもらいたい」という思いも込めている。
「いずれの活動も、地域の皆様に千葉ジェッツふなばしを知っていただく機会にもなっています。そして年々、参加する方が増え、『こういう活動をしてはどうですか』という提案もいただいています。バスケットゴールの寄贈に関しては、子供たちが最初に取り組むスポーツが『バスケットボールであってほしい』という願いもあります」(田村社長)
その他、バスケットボール教室、ボール寄贈、ゴミ拾い、虐待防止を訴える活動などを合わせると、JETS ASSISTの活動は年間100を数える。それぞれには細やかな準備が必要で、スタッフの忙しさは想像に難くないが、広報チームの芳賀宏輔さんは「子供たちや皆さんの笑顔を見れば、大変なことがあってもすべて吹き飛びます」と話す。