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無敵だった短距離女王・福島千里 惹き込まれた、決して五輪を諦めない32歳の「必死」

2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第17回は、陸上女子短距離の福島千里(セイコー)が登場する。2016年リオ五輪まで3大会連続五輪出場。30歳を超え、東京五輪に挑戦する姿に惹き込まれた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

6月の布勢スプリントを走る福島千里、そこには「必死」があった【写真:奥井隆史】
6月の布勢スプリントを走る福島千里、そこには「必死」があった【写真:奥井隆史】

一人の記者が届ける「THE ANSWER」の新連載、第17回は陸上・福島千里

 2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第17回は、陸上女子短距離の福島千里(セイコー)が登場する。2016年リオ五輪まで3大会連続五輪出場。30歳を超え、東京五輪に挑戦する姿に惹き込まれた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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「無理」という外野の声なんて関係ない。挑戦を続ける姿に胸を打たれた。

 初夏の日差しに、心地よい風が吹いた6月6日の布勢スプリント(鳥取)。東京五輪出場を目指す32歳の福島は崖っぷちにいた。4大会連続五輪には日本選手権出場が必須。100メートルは11秒84が最低ラインだった。事実上のラストチャンスだったレース。予選11秒82(追い風2.0メートル)、決勝11秒78(追い風1.6メートル)と風にも恵まれ、3年ぶりの日本選手権出場を確実にした。

 レース後の取材では緊張から解き放たれていた。「(東京五輪へ)首の皮一枚繋がった。やっぱり何歳になっても、何度走ってもレースでミスはする」。笑った横顔には課題を見つけた充実感があった。その中で飛んだ「競技者として、やっぱり日本選手権は重要な試合という位置づけか」という問い。3年ぶり出場を称える空気感に対し、一瞬だけ表情を曇らせたように見えた。

「日本選手権と言わず、もっと上を目指したいっていうのがあるんで」

 出るのは“当たり前”の舞台なのだ。

 19歳だった08年、織田記念国際で当時の日本記録に並ぶ11秒36をマークし、一躍脚光を浴びた。好タイムを連発し、夏の北京五輪切符も獲得。日本女子の100メートル五輪出場は56年ぶりの快挙だった。陸上界に現れたヒロインは、日本選手権100メートル、200メートルともに計8度優勝。6年連続2冠を成し遂げ、100メートルは16年まで前人未到の7連覇と無敵を誇った。

 11年世界陸上では、両種目で日本女子史上初の準決勝進出。4大会連続出場を果たすと、12年ロンドン五輪、16年リオ五輪のトラックも走った。100メートルの11秒21(10年)、200メートルの22秒88(16年)の日本記録はいまだ破られていない。

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