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大学ラグビー日本一の行方 “本命”帝京を追う早稲田&明治、関西勢の連覇なるか

タレント揃いの明治、個々の能力は十分に優勝圏内

 河瀬以外にもタレントは豊富だ。LO兼FL村田陣悟(2年/京都成章)は強靭なコンタクト、サイズに似合わないスピードが持ち味の攻撃的なプレーが魅力。今季はLOでの出場が多いが、FLのようなセットプレーから展開力を生かせるポジションで強みを発揮するタイプだろう。そのバックローには、ルーキーNO8佐藤健次(桐蔭学園)が不動のメンバーに定着。サイズは身長177センチと大きくないが、タックルを受けても前に出る力強さ、チャンスと判断した時の思い切りの良さと、防御を切り拓く能力に長けた選手だ。

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 佐藤と同じルーキーのSH宮尾昌典(京都成章)も、早稲田BKが求める速い球捌きと、俊敏な動きで存在感を見せる。その快足を生かしたチャンス時のサポートラン、危機を察知する判断力とカバーディフェンスなど、個人技と献身さでも、早くも大学トップクラスの9番に浮上。細かなスキルミスの修正ができれば、選手権での危険度はさらにアップするはずだ。

 才能に満ちたタレント揃いの早稲田だが、その強さの源泉はもう一つある。このチームならではの、試合を重ねるごとに研ぎ澄まされるスキルや細かな戦術の熟成だ。対抗戦での慶應大戦では、攻撃時にパスを受ける選手の細かいコースチェンジ、アングルチェンジで、ハードタックルが信条の相手防御に風穴を開けた。明治戦では集散のスピードと、タックル、ブレークダウンに入る姿勢の低さで、パワフルな明大選手の懐に入り込んで、主導権を握らせなかった。周到な準備と選手個々のゲーム理解、そして遂行力を進化させて、秋には敗れた帝京への再挑戦に牙を研ぐ。

 対抗戦、選手権の優勝候補と目されていた明治だが、対抗戦では帝京、早稲田の両ライバルに苦杯を喫しての3位。だが、選手個々の能力は十分に優勝圏内と考えていいだろう。対抗戦で露呈した課題は、選手のポテンシャルをどこまで実戦で引き出せるか、そしてゲームプランの徹底だろう。

 2位の座を懸けた対抗戦最後の早明戦でも、スクラムで圧倒的に優位に立ちながら、その後のラインアウトや、ボールを展開したシーンでの簡単なミスを重ねて、試合の流れを何度も相手に手渡した。攻守に次のフェーズを意識するあまり、伝統の激しい局地戦での勝負に拘らなかった“よそ行き”の戦い方も反省材料だろう。

 この試合でブレークダウンでのジャッカル、カウンターラックと“敗者のMOM”(マン・オブ・ザ・マッチ)と呼べるような奮闘を見せ続けたNO8大石康太副将(4年/國學院久我山)、コンタクト、ブレークダウンで強みを見せるFL福田陸人(4年/國學院栃木)、ともに190センチ台のLO山本嶺二郎(2年/京都成章)、武内慎(3年/石見智翠館)、そして7人制日本代表でもプレーする決定力抜群のWTB石田吉平(3年/常翔学園)とタレントは揃っている。彼らが作り出すチャンスを、どう有効にトライに結びつけることができるかを、勝ち上がるなかで掴めれば、3位からの頂点獲りも見えてくる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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