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ラグビー日本代表と初対戦で注目 4年に1度しか見られない「ライオンズ」とは何者なのか

稲垣啓太(写真は19年撮影)【写真:Getty Images】
稲垣啓太(写真は19年撮影)【写真:Getty Images】

スクラム戦で互角に組み合えるなら大きな自信に

 日本戦では、特に熟成に時間がかかる防御部分は不安定要素があると考えられる。時間の制約がある中で、フォーカスを当ててくる可能性が高いのは、チームの土台となるスクラム、ラインアウト、キックオフといったセットピースの領域だろう。スクラムでリーダーとなるPR稲垣啓太(パナソニックワイルドナイツ)は、こう指摘する。

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「スクラムで仕掛けてくるでしょうね。そこで反則を奪って、コーナーに蹴りだしてモールを組んでスコアしたいでしょうね。ヨーロッパのチームを見ても80%以上、モールからスコアが生まれている。僕らはそこに対して立ち向かわないといけない」

 2019年W杯での日本の快進撃にピリオドを打たれた南アフリカ代表戦の大きな敗因が、スクラム戦での完敗だった。チームの完成度は劣るものの、英国・アイルランドの大型FWが集まるライオンズとの対戦は、スクラムでの挑戦にはまたとない試合になる。6月26日のマレーフィールドで、ライオンズ相手に互角に組み合うことができれば、1年を超える活動停止から走り始めたばかりの日本代表には、力強い追い風にもなるはずだ。

 ライオンズには、分析が難しいチームという側面もある。急速な進化を見せる戦術分析は、日本代表にとっても大きな武器になってきた。だが、今回編成されたライオンズとして試合が行われていないために、映像もデータもない。相手を詳細に分析することは難しい。個々の選手の特徴については各代表でのプレーを分析していくことになる。SO松田力也(パナソニックワイルドナイツ)は「そうなると思います。ライオンズは名の知れた選手が沢山いて、個人的に見ている選手が多いので、各々確認していくことになると思う」と、今春の6か国対抗などでの選手ごとのパフォーマンスの解析に力を注ぐことになりそうだ。

 日本代表にとっても、5月26日の18か月ぶりのチーム集合から、時間との戦いの中で挑むライオンズ戦。コロナ感染対策で1万6500人に制限されるマレーフィールドの観客は、19年に“ホームチーム”スコットランドのW杯決勝トーナメント進出を阻んだ宿敵よりも、母国では16年ぶりに試合を行うライオンズサイドに立つのは明らかだが、ここで金星を奪うことは大きな意味がある。2年前の11月で一度は途切れた日本代表の存在感を再び世界にアピールするのと同時に、4年後の再戦の可能性を広げることになるからだ。

 次回のライオンズの遠征は2025年のオーストラリアが準備されているが、ヨーロッパからオセアニアへの移動で、日本を経由する選択肢がある。過去には、ニュージーランド、オーストラリア代表が、日本で試合を行ってからヨーロッパへと向かったこともある。そしてライオンズ自体も、13年のオーストラリア遠征では、香港に立ち寄りバーバリアンズとのウォームアップゲームを行ってから敵地へ乗り込んでいる。

 今回、ライオンズ狩りという“貸し”を作っておけば、日本代表には金星という直近の利益と同時に、4年後のリターンが期待できる注目のカード。ライオンズ戦で失うものがない日本代表には、いい事尽くめの挑戦になる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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