トップリーグ展望【前編】NZの至宝擁すサントリーを追う存在は…レッドカンファレンス
“2強”を追うクボタ、NTTコミュニケーションズ、東芝の復権は?
サントリー、トヨタ自動車のトップ争いに待ったをかけるほどの力をつけてきたのがクボタスピアーズとNTTコミュニケーションズシャイニングアークスの“千葉湾岸グループ”。中止となった昨季を除く過去5シーズンのTL順位を見ると、クボタは13→12→12→11→7位、NTTコムは8→8→5→9→5位と着実に順位を上げてきた。
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クボタは、18-19年シーズンに8強入りを果たすと、2019年のTLカップで準優勝。チームとして初めて決勝の舞台に立った。強化を推進するのは、5シーズン目の指揮を執る南アフリカ出身のフラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC)。スーパーラグビーでブルズ(南アフリカ)を2度の優勝に導いた名将は、結果に拘りながらも、ゲーム理解やストレングス、フィジカルコンディションの強化などチームのベースを地道に築き上げ、中堅チームを上位が伺えるまでに進化させてきた。
原点になるのは、ブルズとも共通するFWを軸とした接点の激しさ。個々のパワーに加えて、密集戦を80分間戦えるタフさを高めてきた。途中中止となった昨季も、トヨタ自動車相手に18-20と競り合うなど、FW戦ではトップ4クラスの強豪とも十分に渡り合い、今月11日に行われた練習試合でも、強豪パナソニックワイルドナイツを相手にブレークダウン、コンタクトで互角の戦いを披露。主力メンバーがプレーした第1、第2セットでは28-33、互いに若手を投入した最終セットの合計では41-33の好ゲームをみせた。
課題の得点力の低さを解消するために、昨季はオーストラリア代表で不動の指令塔に君臨したSOバーナード・フォーリー、ボールを動かせるニュージーランド代表の主力CTBライアン・クロッテイを獲得。日本代表主将も務めたCTB立川理道主将が加わるフロントスリー(SO-CTBトリオ)は、TL有数の攻撃的なセットだ。
さらに今季は、南アフリカのW杯優勝メンバーで、昨季はライバルNTTコムでプレーしたHOマルコム・マークスが加入。スクラム、ラインアウトで重責を担うポジションながら、FW第3列級の機動力、そして世界屈指のパワフルな突破力を持つマークスと、密集戦のエキスパートとして日本代表のW杯8強入りに貢献したFLピーター・ラピース・ラブスカフニとの競演が楽しみだ。
クボタと共に上位入りを狙うNTTコムも、戦力を充実させている。サントリーのバレット、トヨタ自動車のフーパ―に匹敵するビッグネームがSHグレイグ・レイドロー。ファンには2015、19年W杯と2大会連続で日本代表と死闘を繰り広げたスコットランドの闘将としての記憶が新しいが、代表キャップ76を誇り、主将として出場した39試合は同代表最多と、絶大なキャリアを持つ“タータンチェックの英雄”だ。密集やスクラムからパス、キックを適確に選択してゲームを組み立てる高い戦術眼が最大の武器で、FL金正奎共同主将は「判断のミスがほとんどなく、プレーが正確」と舌を巻く。
チームは、2018年まで指揮を執ったロブ・ペニーHC時代のボールを幅広く展開するラグビーから、キックも用いたオーソドックスなスタイルに戻りつつある。その中で、WTB山田章仁、石井魁のスピードをどう引き出すかが課題になる。昨季加入のオーストラリア代表クリスチャン・リアリーファノ、スーパーラグビー・ハリケーンズ(ニュージーランド)から新加入したフレッチャー・スミスら南半球出身SOと、ヨーロッパベースでキャリアを積んできたSHレイドローが、どうゲームを組み立てていくのかが注目される。
この上位グループに食い込む可能性を秘めているのが東芝ブレイブルーパス。TL最多タイの優勝5度を誇る名門だが、過去3シーズンは9、6、11位と苦闘を強いられてきた。本社の業績不振がチーム運営にも影響を及ぼす中で、ようやく再起への道を加速し始めたのが現状だ。
大型補強はないが、日本代表主将NO8リーチ・マイケル、ニュージーランド代表FLマット・トッド、パワーハウスと期待されるFLシオネ・ラベマイが組むFW第3列はリーグトップクラスの攻撃・防御力を持つ。BKでも技巧派CTBティム・ベイトマン、ストレートランなら国内屈指のスピードを持つWTBジョネ・ナイカブラら多彩なアタッカーが揃う。彼らが期待通りの力を見せれば、カンファレンス内の順位争い、そしてプレーオフトーナメントの地殻変動を起こす可能性を秘めている。
(ホワイトカンファレンスの展望は18日掲載)
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)