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最後のマラソン五輪女王・野口みずきの今 陸上界のスマホ世代に「欠如」を感じること

長崎・五島市で「野口みずきランニング教室」を行う様子
長崎・五島市で「野口みずきランニング教室」を行う様子

上を目指す現役選手に願うこと「素晴らしい女性になって」

 後輩ランナーの成長を願う一方、コロナ禍前は一般ランナーへの教室も行っていた。そこで驚いたのは参加者たちの熱意だ。「皆さんの向上心が凄いんですよね」。休憩時間も金メダリストに教わったものをそれぞれが復習。走ることを楽しみ、一生懸命に知識を得ようとする光景を見ると、伝える側として新たな感情が芽生えてきた。

「凄く面白い。こちらも本当にやりがいがあります。皆さんが自己記録を高めたり、楽しさをより深めたりするきっかけになれて凄く嬉しいですね。見る目が選手時代の感覚から指導者側の感覚に少しずつなってきている自分がいます。そういう自分の変化を知ることも面白い。現役時代も目標をクリアすると、ステージごとに出会いや学びがありました。今もまさにその途中。ずーっと続いていくんだなと。ステージごとに景色は違いますが、成長を感じます」

 自身は16年4月に引退を表明し、同7月に一般男性と結婚。夫の仕事の都合で上海に移り住んだため、解説業やイベント出演のオファーがあっても可能な限りに留まっていた。引退から1年近くは「体を休めたい」とランニングを封印。それでも、時が経つと「お酒が好きなのですが、少しずつ毒素が体中に回っているような感じがして。やはり走らないと気持ち悪い」と、シューズを履かずにはいられなかった。

 今は夫と大阪に住まいを移し、天気が悪くなければ1日約10キロ、1キロあたり5分強のペースで走る。「のんびり楽しく走るようにしています。今はお酒を美味しく飲むために走っているような(笑)」。音楽を聞き、ゆっくり景色を眺めながら息を切らす。「ランニングの魅力は『無』になれること」。速く走ることを目指した現役時代とは違った楽しみ方だ。

 自身が現役時代に得たものは「人との繋がり」。実業団入り後は当時監督の藤田信之氏、コーチの廣瀬氏と苦楽を共にしてきた。マネージャーを加え「肩書きを超えて身内のような関係」となった。だからこそ、現役の後輩たちには「競技力を磨くだけではなく、選手として欲を持ってほしい」と願う。

「これからも自己ベストを出していくでしょうし、いい意味で欲がどんどん出てくると思います。そうやって駆け上がってほしい。監督やコーチに練習を見てもらうのも当たり前ではありません。自分に関わっている全ての人は絶対に何か意味があるので、当然だと思わないでほしいですね。その中で選手として、人として、素晴らしい女性になってほしい」

 まだ教える側としての理想像や目標は見えていない。ただし、「金メダリスト」だからできることがある。アテネを駆け抜け、トップで競技場に戻ってきた時の光景、輝いていた五輪のマークは忘れられない。

「しっかりと努力した結果、自分の目標に手が届くという素晴らしさがあると思います。私は一度頂点を見ているので、そういったものをできる限り伝えていければ」

 世界で一番速く42.195キロを駆け抜けたランナーは今、第二の人生でもやりがいを持って走っている。

■野口みずき/THE ANSWERスペシャリスト

 1978年7月3日生まれ、三重・伊勢市出身。中学から陸上を始め、三重・宇治山田商高卒業後にワコールに入社。2年目の98年10月から無所属になるも、99年2月以降はグローバリー、シスメックスに在籍。2001年世界選手権で1万メートル13位。初マラソンとなった02年名古屋国際女子マラソンで優勝。03年世界選手権で銀メダル、04年アテネ五輪で金メダルを獲得。05年ベルリン・マラソンでは、2時間19分12秒の日本記録で優勝。08年北京五輪は直前に左太ももを痛めて出場辞退。16年4月に現役引退を表明し、同7月に一般男性との結婚を発表。19年1月から岩谷産業陸上競技部アドバイザーを務める。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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