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記者が知る「ゴローちゃん」の素顔 “早稲田の悪ガキ”が国民的ヒーローになるまで

五郎丸歩【写真:荒川祐史】
五郎丸歩【写真:荒川祐史】

五郎丸人気に見るラグビー界から人気者を作る方法とは?

 新秩父宮ラグビー場を人工芝にするなどと考えている限り、まさにラグビー文化という苗が根付くことはないと思うのは、悲観的すぎるのだろうか?

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 あのゴローフィーバーの中で、連日、目も眩むほどのメディアに囲まれたゴローちゃんは、たまに気の利いたコメントをしながらも、その大半は、いつもそっけない質疑応答を続けていた。その一方で、顔が知れた数人のメディアだけと接したときには、軽口や辛辣なジョークを織り交ぜた、以前と変わらない話ぶりと表情だったのが印象に残る。

 ヤマハのスタッフによると、やはりメディアとはいえ、見ず知らずの“多数”の中では、どうしても口をつぐみがちだというのだ。このようゴローちゃんの振る舞いから感じるのは、あれだけスター扱いされ、もてはやされる中で、心にもないリップサービスが苦手な不器用なラグビー少年の姿だ。この実直さを忘れなければ、ゴローちゃんは、どこにいっても心配ないはずだ。

 余談だが、2015年のW杯からのゴローちゃん人気を見て、ラグビー界から人気者を作る作法も学ばせてもらった。

 当時のラグビー(五郎丸)人気を支えた大多数は、イングランドでの戦いぶりをテレビで観戦した人たちだ。つまりテレビ画面の映像に惹きつけられたのだ。野球のように、静止画像のような投手と打者の姿を見慣れている人たちにとって、常に動き続け、画面の右端から左端へ駆け抜けていく選手が写されるラグビー中継は、選手の姿、表情、仕草をじっくり観察することは難しい。

 その中で、嫌というほど画面に映し出されたのが、ゴローちゃんだったのだ。他にアップで映される可能性があるのは、トライした選手か、せいぜいノックオンして気まずい顔をしたPRあたりだ。そのノックオンの多くはパスする側のミスでもあるのだが……。そして、このような選手の場合でも、キッカーほどじっくりと静止画像風の表情が放映されることはない。

 その、視聴者がじっくりと見つめることが出来る選手が、長身でイケンメン、7割ほどのキックが得点(成功)になり、一度聞いたら忘れない名前であれば、もう文句のないスターになれるのだ。

 日本協会は、これから日本代表のキッカーには、長身イケメン、珍しい名前の選手を探せばよい。

 大分余談が過ぎたが、まだ1シーズンはゴローちゃんはプレーをし続けるので、観戦が可能であれば、ファンの皆さんには是非スタンドで応援をしていただきたい。

 そして、ヤマハ発動機、桜のジャージーの選手たちは、彼の言葉を引き継いで欲しい。この極東の島国に、ラグビーを文化として根付かせることができるかは、あなたたちなしには不可能なことだ。もちろん、ゴローちゃん自身も、引退後は新たなポストで、ラグビーを応援してくれるはずだが、ピッチに立ち、戦う人たちが、最も訴える力を持つのは、どの競技でも不変の鉄則だ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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