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ラグビー選手・川西智治が難病を告白 人知れず10年続ける「潰瘍性大腸炎」との闘い

深めたい理解、目に見えない病気だけに悩んでいる人も多いはず

 僕はラグビー選手であると同時に、トヨタ自動車の社員でもあります。ラグビーの練習や試合に加え、病気の治療や入院でも仕事を休みがちになり、出社しても腹痛で仕事がままならないこともあります。おそらく、潰瘍性大腸炎を患っている人の中には、学校や会社にいる間、あるいは登校、出社、帰宅の最中に突然腹痛や便意に襲われ、苦しい思いをしている人が多いでしょう。僕も車で通勤中に便意を催して遅刻してしまい、自分が嫌になったこともあります。電車で学校や会社に通っている人は、さらに大変な思いをしているのではないかと思います。

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 コロナ禍により在宅ワークになった時、移動がないこと、人の目を気にせずにトイレに行けること、など、これまで感じていた大きなストレスが一気に緩和されたことを覚えています。在宅ワークになって助かった思いをしている人は多いでしょう。例えば、今の状況が落ち着いた後も、業務に支障のない範囲で潰瘍性大腸炎を持つ人に在宅ワークが認められれば素晴らしいことだと思います。

 病気と向き合うようになって以来、ラグビーをプレーする上でも考え方に変化が訪れました。これまでは「努力は必ず報われる」と思っていましたが、今では「考えて努力する」ことを意識しています。同じ努力をするにしても、自分の必要なことをしっかり理解していなければ、効果は半減してしまいます。そして、ただ単に練習をして追い込むのではなく、時には休んだり強度を落としたりすることもまた、同じくらい大切な選択肢だと知りました。こういった考え方の変化がなければ、33歳になった今も現役を続けていることはなかったでしょう。

 人の目には見えない病気を患ったことで、人に優しくなった自分もいます。今でこそ、僕は病気のことを話せるようになりましたが、人には言えず苦しんでいる潰瘍性大腸炎の患者さんは多いと思います。僕と同じ病気を持つ人だけではなく、誰しも人には言えない悩みや理解されない辛さを抱えているでしょう。みんなが人のことを少しだけ思いやれれば、過ごしやすい世の中が生まれるかもしれません。

 もちろん、世の中はみんなが同じ感覚を持っているわけではないので、僕の話を聞いても言い訳としか思わない人もいるでしょう。ただ、僕の告白をきっかけに潰瘍性大腸炎に対する理解が深まり、また同じ病気を持つ患者さんを少しでも勇気づけられれば嬉しいです。

 僕と潰瘍性大腸炎との共存は、これからも続きます。この病気で失ったもの、味わった悔しさや辛さは、僕を大きく成長させてくれました。同時に、僕には家族、友人、会社、チーム、医療関係の皆さんの温かいサポートがあることも知ることができました。ありがとうございます。この感謝の気持ちを示すためにも、1月に開幕するトップリーグで活躍することがすべて。全力で準備を進めていきます。

 トヨタ自動車ヴェルブリッツ・川西智治

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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