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アスリート700人超の「うんち」収集 元日本代表MFが力説、腸内細菌研究の意義と“発見”

2016年1月、浦和レッズのユニフォームを脱いだ鈴木啓太は、AuB株式会社の代表取締役に就任し、早速自ら営業活動に取り組み始めた。

鈴木啓太氏はアスリートから“便”を提供してもらうため自ら勧誘活動を行った【写真:AuB株式会社提供】
鈴木啓太氏はアスリートから“便”を提供してもらうため自ら勧誘活動を行った【写真:AuB株式会社提供】

【鈴木啓太、腸内細菌研究に懸ける想い|第3回】アスリートから“便”を提供してもらうため自ら勧誘活動

 2016年1月、浦和レッズのユニフォームを脱いだ鈴木啓太は、AuB株式会社の代表取締役に就任し、早速自ら営業活動に取り組み始めた。

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 営業の中味はアスリートからの腸内細菌収集で、つまりは「大便(うんち)」を提供してもらうための勧誘活動だ。さすがに単刀直入に切り出すと「何に使うんですか!」「どうやって送るんですか!」などと驚かれ、時には嫌悪感を示す選手もいた。最初に交渉したのはプライベートでも親交のあるラグビー日本代表の松島幸太朗で、やはり当初は「え! 何言い出すの?」と目を丸くしたが「将来アスリートのためになるんだから」と半ば強制的に押し切ったという。

「頑なに拒否する方もいました。でもほとんどの選手たちが、きちんと説明すれば逆に興味を持ってくれました。こちらも直接うんちそのものが欲しいわけではない(笑)。提供して頂き解析研究するのが目的なので、概して特に女子選手はしっかり説明すると『私、そういうことを知りたいんです』と積極的に興味を示してくれる傾向が強かったですね」

 やがて青山学院大学時代に箱根駅伝5区の山登りで活躍した神野大地や、プロ野球ヤクルトスワローズの嶋基宏ら多くの協力者を得て、今年春の時点で28競技から700人以上の便を収集することに成功した。

「むしろ一番大変だったのは資金集めでした。便は無料で提供して頂けたとしても、検体を調べる研究費はかなり嵩みます。それでも最近は、アスリート側から『ぜひ調べてください』と言って頂けるほど浸透してきました」

 アスリート、一般人を問わず、日常生活で便が話題に上ることは滅多にない。それだけに様々なアスリートとの会話には、新鮮な驚きも詰まっていた。

「基本的に便秘の選手はほとんどいませんでした。しかしなかには2日に1回しか出なくて、それが当たり前だと思っている選手もいました。アスリートは平均して1日に2~3回出る人が最も多かったですね」

 便秘が体に悪いのは容易に想像がつくが、排泄の回数が多くても問題はないのか。鈴木に解説してもらった。

「便がたくさん出る人は、腸内にたくさんの細菌を持っていると推測できます。健康を保つには多様な腸内細菌があるほうが良い。また便が何でできているかというと、60~70%が水分、残り15%くらいが腸内細菌の死骸や腸壁の剥がれたものだと言われており、食べ物のカスは5%程度なんです。食事をして代謝し栄養成分を取り入れ、そのカス(老廃物)が出ていくので、それが1日に2~3回というのは良いことだと思います」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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