村田諒太、SNSの関係は「友達と思われへん」 ネット時代に居場所を作る「志」の輪
王座奪還の夜、村田は説いた「個人は一つの歯車。生きていく上で居場所は大事」
まさしく「同志」だ。村田自身、志から生まれた居場所の大切さを痛感した試合がある。昨年7月、ロブ・ブラント(米国)へのリベンジマッチ。第1戦で敗れた後、引退か悩んだ末に現役続行を選び、下馬評を覆す燃えるような激しい王座奪還劇で感動を呼んだ。家族やチームに支えられてたどり着いた決戦のリング。試合直後の控室で帝拳ジムの絆についてこう語っていた。
「個人っていうのは一つの歯車だと思う。南京都が居場所をくれたし、東洋大も居場所をくれたし、帝拳でも一部でいられる。生きていく上で居場所があるって大事なこと。あの場で一緒に汗を流した僕らにしかわからないつらさも、嬉しさもある。南京都と一緒なんですよ。南京都にも魂があるし、東洋大にも魂があるし、帝拳ジムには帝拳ジムの魂がある。そこに宿っている。そこにいることで影響があるし、そこで絆が深まると思う」
生きていく上で大切な居場所。学校や職場で集団に馴染めず、ネットに活路を求める人も多いだろう。もしかしたら、現実世界に同じ志がないからかもしれない。村田はネットを全否定するわけではないが、人間関係において「空想の世界」と表現する。さらに“リアルな付き合い”の必要性を説いた。
「あーだ、こーだ言って空想の世界におるんやったら、それまでですよね。自分で動き出さんと。『バチン!』と喝を入れられたと思って一歩踏み出す。そういうのが必要かなと思いますね。今はあまり外に出ない方がいいけど、結局は人との付き合いでしかないですし」
伸び悩む若手がいればアドバイスする。トレーナーが誕生日を迎えれば、サプライズケーキを持って登場する。困っている仲間には手を差し伸べ、感情を共有してきた。そんな村田でも、顔の見えない相手へのフットワークは重い。デジタルな付き合いだけになれば、他人を大切に思えず、冷たい社会になってしまうのではないか。そうやって未来を案じ、嘆くように発した。
「う~ん、ネット全盛の時代やけど、ネットとの友達がどうのこうのって言ってもなぁ。薄いもん。そんなん友達と思われへんもんなぁ。この人のために何かしたろって思わないでしょ。やっぱり同じことを共有して、そこに志があるから人のために何かをやるわけで。薄い関係ではそういうことをやろうと思わないのが、正直なところですかね」
思えば、昨年は「ONE TEAM」が流行語となった。志があり、一つになり、気づけば居場所ができていたのだろう。同志になれるのは、必ずしも大人数の集団とは限らない。2、3人でも志が関係を繋いでくれるはずだ。
村田は志が繋いだ腐れ縁に囲まれている。いつも人の輪の中心にいる世界王者の言葉。居場所がないと悩む人にとって、一歩前に進むヒントが詰まっていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)