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福岡堅樹の離脱を嘆く時間はない 東京五輪まで1年、セブンズ代表が抱える課題とは

本番までにどれだけの経験を積めるのか

“ポスト福岡”という視点で記事を進めてきたが、福岡の代表辞退と同時にリオ五輪主将の桑水流裕策(コカ・コーラ)、橋野晧介(キヤノン)という経験豊富なメンバーの離脱も発表されている。リオ五輪後の国際大会をみても、経験値の高い選手が加入した大会では善戦をみせていたことを踏まえると、一発勝負の傾向が強い五輪では福岡と共にこの2人の不在も深刻だ。

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 6月10日に行われた日本協会理事会後に、7人制男子代表HCを兼務する岩渕健輔専務理事は今後の代表強化の道筋を語っている。

「選手の現時点でのコンディションがバラバラな状況。6月19日の県を跨ぐ移動が完全に解除された以降に3地域ないし4地域で、エリアが近い選手が集まり、代表コーチがそこへ行って練習することを考えています。代表チームがフルに集まって活動するのは、来年の五輪1年前の7月下旬を想定しています」

 残り1年というカレンダーを考えても、再集合を焦る必要はないだろう。7人制の場合は、15人制以上により多くの実戦を積むことが重要だ。東京五輪へ向けて、どのような国際大会にどれだけ参戦できるかだろう。ここは統括団体のワールドラグビー(WR)の判断が注目されるが、次シーズンのワールドシリーズの開催が決まった場合、依然としてシード権を持たない日本がどれだけの大会に出場できるかがカギを握る。コロナ禍による大会の中止、日程の混乱などの状況を踏まえて、日本がより多くの大会に招待されるように訴え、交渉をする必要がある。

 もしワールドシリーズの出場チャンスが不十分であれば、それ以外の国際大会に参加するか、4月に計画していた「アジアインビテーショナル」のような日本協会主催の国際大会を開催するなどの対策が不可欠だ。

 同時に、選手層の厚みという課題をこの1年で改善するには、7人制日本代表という1つのチームでは不十分ではないだろうか。代表候補や若手代表を編成して、より多くの国際大会に、より多くの選手を投入して経験値を上げることも考える必要があるはずだ。

 東京五輪がラグビーの普及には重要なことは、誰もが認めていることだろう。そして、昨秋の15人制ワールドカップでの日本代表の歴史的な躍進が、その重要性をさらに高めている。日本国内でのラグビーの認知度、関心度がワールドカップ前から飛躍的に高まっている中で、今度は7人制日本代表が1競技のワールドカップ以上の影響力、発信力を持っている五輪の舞台に立つのだ。

 ここで結果を残せるか否かは、ワールドカップで日本国内に根付かせた“苗”をどう開花させ、実を結ばせるかを問われることになる。一過性の大会の勝ち負けではなく、今後の日本国内でのラグビーの立ち位置を決めるほどの重責が、7人制日本代表に託されることになる。

 だからこそ、福岡堅樹の離脱を嘆いている時間はない。再び予想外の事態がこれからの1年で再び起きないという保証もない。この1年で、強豪国はさらなる強化をしてくるのは明らかだ。与えられた1年で、新たな戦力を育て、どんな不測の事態が起きてもメダルを獲るために必要な戦力を整え、厚みを増やしていくことが、日本協会と7人制日本代表が取り組むべきタスクになる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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