「『強い』だけじゃ片付けられない」 中野友加里が感じるアスリート羽生結弦の凄み
元フィギュアスケートの中野友加里さんが昨年3月、勤務していたフジテレビを退社し、再びフィギュア界で活動を始めた。解説者として競技の魅力を発信する傍ら、「ジャッジ」といわれる審判員としても活躍。世界選手権に3度出場し、05年グランプリ(GP)ファイナル3位など実績を残した、かつての名スケーターがこのほど「THE ANSWER」のインタビューに応じた。
中野友加里インタビュー第3回、改めて考えたい「羽生結弦は何が凄いのか」
元フィギュアスケートの中野友加里さんが昨年3月、勤務していたフジテレビを退社し、再びフィギュア界で活動を始めた。解説者として競技の魅力を発信する傍ら、「ジャッジ」といわれる審判員としても活躍。世界選手権に3度出場し、05年グランプリ(GP)ファイナル3位など実績を残した、かつての名スケーターがこのほど「THE ANSWER」のインタビューに応じた。
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全3回に渡ってお届けする最終回は「中野友加里が感じる羽生結弦の凄さ」。圧倒的な実績を誇り、フィギュアスケート界を牽引する25歳は何が凄いのか、独自の視点で分析。さらに、中野さんが「最も羽生の強さを感じた演技」を1つ挙げ、3連覇がかかる2022年北京五輪と前人未踏の4回転アクセル成功に注目が集まる今後の可能性についても言及した。
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オリンピック連覇に国民栄誉賞受賞。世界最高得点の更新は実に19回を数え、今年はジュニア、シニアの主要国際大会をすべて制覇する「スーパースラム」を達成。こうして、ここに記すことが野暮に思えるほどの実績で、日本で最も有名なアスリートの一人となった。現役ながら絶対的な地位を築いた今、改めて25歳の魅力を考えてみたい。敢えて、最もシンプルな言葉で質問した。
羽生結弦は、何が凄いのか。
迷うことなく、中野さんは「有言実行する凄さ、と私は思っています」と答えた。
「羽生選手はインタビューで前向きな発言をしますが、それを口だけじゃなく、氷上の演技に移して実行していること。これが凄さの一つだと思いますが、それは彼にとっては些細なことかもしれません。より凄みを感じるのは『羽生結弦』という一人の人間が、自らをどんどん進化させていく強さ。自分で自分を超えていく強さが一番だと感じます。
自分がトップになると、本来は追われる立場になりますが、追う者より自分が強くなり、前に進んでいる。それは彼の持つ才能であり、日々の努力、進化でもあり、強さでもある。もともと才能があったにせよ、その裏にはたくさんの努力がある。陸上、氷上の見えない努力があってこそ、新たな羽生結弦が生まれ、進化していっていると感じます」
「自分で自分を超えていく」と表現した羽生の才能。それは「挑戦心」という言葉にも置き換えられる。
「新しいことにチャレンジし続けるのが羽生選手らしさ。試合では誰でも負ける時はありますが、負けたら『悔しい』と素直に言って、でも『早く練習がしたい』とすぐに次を見据えている。その気持ちの切り替えは本番の演技にもつながってくる要素です。自分自身で作っていくものですが、切り替えの強さは大きな武器になっていると感じています。
その上で、新しいものにチャレンジしていく姿勢は素晴らしい。人間は今できることを維持しなきゃと思ってしまいがちですが、もっと上に思考を引き上げ、逆に『できて当たり前。新しいことやらないと』と実際に成功させていく。なんでしょう、あの感覚……。『強い』だけじゃ片付けられないくらい。それが羽生結弦なのかな、と感じます」
現状維持は、退化と同義。昨日の自分を今日超え、明日も成長を求めていく。尽きることのない意欲が絶対王者たらしめる。