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サンウルブズは存続させるべし ベテラン記者が模索する生き残るための“裏技”とは

変革なくしてサンウルブズの存続もない

 今年1月の渡瀬CEOのインタビューは、こらからのラグビーのあり方を考える上で非常に興味深いものだった。

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「SRは観客動員などをみても、来季からの4つの国を跨いでやっていくのが果たして本当にいいのかという声がある。ビジネスという面では、決してないことだと思っているし、みんな同じ時差のところで戦えるのがいちばんだという考え方もある。日本にもすごく可能性があるという話はでてきています。彼らの中では、おそらく2023年とか25年というターゲットを考えているのだが、僕らはその前の21年からでも打って出たい。そこは、ビジネスの力を借りながらやっていかなきゃいけないと思っています。感触はまだなんともいえないですが、僕らが残っていくためにはお金も必要になってくる。そこはしっかりと連携をとっていく必要がある」

 当時すでにサンウルブズのリーグ離脱は確定事項だったが、同CEOのコメントの中に、いくつかのキーワードが読み取れる。発足から四半世紀を迎えたSRだが、その運営は盤石とはいえない。大会フォーマットは数年のスパンで変更を繰り返してきた。サンウルブズの参入や来季の除外もその一環だ。新たな市場開拓が求められるのと同時に、参画各国協会の間にも複雑な対立がある。

 そのような状況の中で、ここまで3シーズン同じカンファレンスで戦ってきたオーストラリアとの連携をさらに発展させることが、サンウルブズの置かれた状況を打ち破る突破口として期待される。

 オーストラリアは、W杯2度の優勝を誇るラグビー大国だ。しかし、最後の覇権は1999年。国内人気も13人制のリーグラグビー、オージーボール、そしていまやサッカーにも凌駕されつつある。渡瀬CEOがレベルズの本拠地メルボルンを視察したときにも、金曜日のSRに集まった観客が5、6000人だったのに対して、翌日のサッカーには2万5000人、そしてビクトリア州で盛んなオージーは5万人のスタンドがほぼ埋まっていたという。SRは長期低落傾向を阻止するカンフル剤としても期待されたが、現状では望んだ形になっていないのは他の州でも変わらない。

 SANZAAR内部でも、常に様々な大会方式が論じられてきた。コロナ後を踏まえて議論はさらに進められる可能性がある。もし、従来の変則的な各国間を跨いだリーグ戦方式が大幅に変更され、各国・地域の独自性が強まるフォーマットが導入されれば、時差の問題がない日本とオーストラリアが新しいアライアンスを構築するチャンスが生まれる。相手側が魅力を感じるようなファイナンスを準備することが不可欠だが、ここはサンウルブズのスポンサー獲得で築いた企業との繋がりや、昨秋から吹く国内でのラグビー人気を最大限に利用するしかない。

 オーストラリアのSRチームが過去、現在に日野自動車、リンナイ、ダイキン、ヤクルトといった現地法人も含む多くの日本企業とスポンサー契約を結んできたこともポジティブな材料にするべきだろう。

 もう一つ“裏技”がある。

 多くのラグビーファンは、トップリーグに代わり2021年の開幕をめざす国内新リーグに関心を持ち、楽しみにしているのではないだろうか。過去数年、日本協会内で検討されてきた「トップリーグネクスト」というプロジェクトが一時はプロリーグ構想に発展したのだが、多くの国内チームからの賛同を得ることが出来ずに現状の新リーグ構想に転じたものだ。この新リーグ構想を日本を軸とした国際リーグに焼き直すことができれば、サンウルブズ存続の受け皿になるはずだ。

 では、どのようなチームが参入の可能性があるのだろうか。サンウルブズ同様にSRから除外されたオーストラリアのウェスタンフォースは、独自の国際大会を開催し始めたが、この大会と連動することも吝かではない。開催期間次第で、南北半球でオフシーズンのリーグから単独か再編成されたチームを招き、国際レベルでも強豪と位置付けられるフィジーウォリアーズ(フィジーA代表)や、フィジー、トンガ、サモアの連合チーム・パシフィックアイランダーズなどもある。日本とSR参戦を激しく争った、シンガポールをベースとするアジア・パシフィック・ドラゴンズも候補になる。トップリーグもしくは国内新リーグからピッアップされた選手で編成された、サンウルブズに近い形態の日本チームが他にあってもいいだろう。

 これらの国際レベルに見合うチームを最低5チーム集め、日本と各クラブのホームでの試合をすることができれば、SRに代わるサンウルブズの棲家になる。

 オーストラリアとの連携にしても、日本を軸とした国際リーグにしても、現状での可能性を考えれば、まさに空論=アイデアに過ぎない。だが、アイデアは無限にあり、そしてサンウルブズを存続させるには、いままでの常識に囚われないような発想がなければ難しいのも明らかだ。

 1つだけ確かなことがある。

 このチームを存続させるか、このまま消滅させてしまうかの決定権は日本ラグビー協会が握っているのだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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