運動会で順位のない現代っ子「なぜ競争させないの?」 元ボクサーが運動能力向上に貢献する理由
ボクシングの元世界王者が、子どもの運動能力向上に一役買っている。2004年に「飯田覚士ボクシング塾 ボックスファイ」を設立した、元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏。現在は解説業の一方、東京・中野区に自身のジムを持つ。視覚能力を高めて運動能力を向上させる「ビジョントレーニング」が売りの一つだ。
元プロボクサー・飯田覚士氏が教える子どもの運動能力向上プログラム・後編
ボクシングの元世界王者が、子どもの運動能力向上に一役買っている。2004年に「飯田覚士ボクシング塾 ボックスファイ」を設立した、元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏。現在は解説業の一方、東京・中野区に自身のジムを持つ。視覚能力を高めて運動能力を向上させる「ビジョントレーニング」が売りの一つだ。
現役時代の方法に加え、体や脳の動きを融合させた独自プログラムで子どもたちを指導する。競技の枠に収まらない効果を語ってくれた前編に続き、後編は指導の根幹となる危機感を抱いた現代の子どもの運動事情。塾の指導理念には「教育」が前提にあり、飯田氏が競争から離れた子どもたちの運動能力向上に尽力する理由を聞いた。(文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
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2児の父である飯田氏が子どもの小学校を訪れた時のことだった。
「運動会の直前だったんですけど、三角巾やギプスをはめている子どもが目に付いて、『あれ何?』って聞いたら『運動会の練習で骨折した』って。家に遊びに来る友だちでも骨折や怪我をしている子が目に付くようになり、『これはやばいぞ』と思うようになりました」
元アスリートとして危機感を抱いた。田舎で木登りをするようなタイプだった自身の子ども時代とは真逆の現代っ子たち。「今はゲームやスマホが子どものコミュニティーなので、遠くを見ることもないし、ボール遊びも全然やらない。広いところで一つのものを追いかける時間が少なくなっている」。時代が変わり、親が勉強第一になるのは仕方がない。しかし、動かずにはいられなかった。
幼少期の外遊びは運動能力の礎となる。04年に「ボックスファイ」を設立。「公園で遊ぶ」を原点に考案した指導プログラムは、20年で100種類ほどになった。年少~小学6年生まで約80人が在籍し、数字暗記クイズ、リズム体操、エアーボクシングなど体と脳を同時に使うメニューがズラリ。視覚能力を養うビジョントレーニングでは、目・脳・体を歯車のように連係させてそれぞれの能力を向上させていく。飯田氏は現役時代の経験を基に力説した。
「目の動きが悪いから集団行動が苦手だったり、勉強についていけなかったりします。眼球運動だけをやっていてもダメなんです。体からしっかりつくってあげて、自分の動きに対応する目を養う。目が良くなれば、それだけ子どもって動けるんです。目がしっかり使えていないと周りとぶつかってしまったり、スポーツも上手にできなかったりします。
鬼ごっこで上手くすり抜けていくことができないのも、目がよくなるとギリギリを攻めて行けるし、いろいろなことができるようになります。それによってやる気がより出てきます。
そうすればもっと見なければいけなくなるので、またぐっと集中して焦点を合わせる。そうなると、また運動能力も上がってきます。“目”を上げてあげることで“体”が上がる。『この子は体(を上げることが必要)だな』と思って、体をしっかり上げてあげると目がついてきます。動けるようになるので、今度はより見て正確にやろうとするんです」