日本のスポーツ界が「なかなか変わらない」理由 未来を見据えた育成環境の重要性
ドイツで議論される将来を見据えた取り組み
変わるきっかけがどれだけあっても変わることができない体質がそのままだったら、未来永劫に状況は好転しない。海外の現場を見に行く機会を増やせば良くなるのかといっても、物見遊山で表面だけ見ての視察旅行ではレポートを書いておしまいになってしまう。それでは次につながらない。
感受性が高く、将来への危機感を持っていて、アイデアが豊富な人材の登用を積極的にできるようになることが大事だし、そのためにはそうした人材が持つ価値を持った人が人事を司る立場にいられるかが重要になったりする。
日本のスポーツ界は五輪やサッカーのワールドカップ(W杯)のように、4年周期で考えられることが一般的かもしれない。でも根本的なことを改革するためには、この周期だけを見ていたら難しい。
ドイツだとどうだろう? ここ数年間、ドイツサッカー連盟をはじめ指導者界隈でよく議論されているテーマは、《2024年にドイツで開催される欧州選手権でどうするか》だけではなくて、《2034年W杯に出場するであろう選手が育つ環境を作るにはどうしたらいいか》なのだ。
その時に20~25歳を迎え、主力選手として活躍するだろう選手というのは、今まさに小学校低学年でサッカーを始めている時期。その子たちがどのようにサッカーを始めて、どのようにサッカーを好きになって、どのように取り組んで、どのように育って、どんな選手になっているのが望ましいのかを真剣に考えているわけだ。そして、そのために様々な試みが行われている。長期的なスパンでスケジューリングをしていくことは、どのスポーツにおいても非常に重要だ。
「次の大会まであと4年しかないよ」という話を毎大会ごとにしていたら、いつまでたっても間に合わない。それを根本的なところから変えるためのスケジューリングや育成の取り組みへ、どんどん力を入れていくことが今後ますます求められるはず。
新しいことにチャレンジしたり、自分を変えることを受け入れるのを怖がっていては、未来の希望はつかめないではないか。せめて自分のできるところから変えて、変わっていきたい。
(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)