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高校サッカー選手権は「選手のためにある」 ボトムアップ部活で2年ぶり全国、堀越監督が貫く信念

堀越高は全国高校サッカー選手権に2年ぶり5回目の出場。本大会に向けて練習にも熱が入る【写真:徳原隆元】
堀越高は全国高校サッカー選手権に2年ぶり5回目の出場。本大会に向けて練習にも熱が入る【写真:徳原隆元】

佐藤監督が納得いかなかった準決勝の戦いぶり

 結局、昨年の選手権予選では、国学院久我山が堀越に3-0で雪辱。そして今年も堀越は、質の高い群雄割拠状態が続く東京都高体連の中で苦しみ続けた。

「今の3年生は、ちょうどコロナ禍の最中に高校進学を決めることになりました。従ってこちらが視察へ行くのも、練習参加に来てもらうのもままならなかった。堀越が全国選手権でベスト8に進出するのを、まだ当時中学生だった彼らは見ていません。だから新入部員は質量ともに不足していました。FC東京U-15むさし出身の中村健太や、横河武蔵野FC U-15出身の吉荒開仁のように小中学校ともに全国大会を経験しているような選手は他にいなかったので、上級生たちも『早くトップチームに上げよう』と経験を積ませてきました。ただし、逆に彼らを脅かすような選手は少なかったですね」

 率直に佐藤は「難しい年代になる」と予感していた。実際、新チームがスタートして新人戦、インターハイ予選ともに敗退し、T1リーグでも中位以下を低迷することになる。佐藤監督は「このままでは中村健太主将がやりたいサッカーの完成は間に合わない」と感じ、夏休みには他の戦術的な選択肢も提示し試したが、なかなか上手くいかなかった。

「でも最後の選手権は選手たちのためにあるもの。僕が突っ走っても良くない」

 佐藤は改めて中村に問いかけ、主将自身の本音を探った。

「最初に決めた4-3-3を成立させて、勝っても負けても1年間頑張ってきたものを残したいです」

 中村の明確な言葉で、再度方針は定まった。

 選手権予選の道のりも決して平坦ではなかった。2次予選3回戦の東京成徳大戦では、両チームともにゴールがなくPK戦の末に勝利を手にした。ただし佐藤は、この薄氷の勝利には70~80点と高評価を与えている。

「やるべきことをすべてやっても勝ち切れないことはある。3年前(全国ベスト8)にも、そういう試合はありました。当日は凄く雨が降っていてピッチに水が浮いた状態。高校サッカーでは、そんな時に自滅して終わるパターンが少なくない。この試合はPKも全員が決めているし、よく耐えて乗り切った。分岐点があるとすれば、ここだったのかな、と」

 逆に納得がいかなかったのが、前半で2点を先行し1点差で振り切った準決勝の日大三戦だった。

「たくさんの応援を背に早い時間帯で点が取れたこともあり、イベント的な雰囲気が出てしまった。ゴールを決めた選手がスタンドまで突っ走っていくんですが、最後は足がつる選手も多くボールを追えなくなっていた。試合後には30点だと告げ、映像を見直して50点に修正しましたが、決勝で対戦する修徳は残る50点を上乗せしない限り勝算は見込めない相手でした」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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