ガーナ人の父を持つ日本人 境遇に悩まないボクサー岡澤セオンの「何に目を向けるか」という生き方
ネガティブな言葉を受け流せる性格、原点は「友だち。一番の個性としていじってくれた」
――ダイレクトメッセージ(DM)で直接攻撃的な言葉が届くこともあると聞きます。
「それは来ますよ。『この黒人が!』みたいな。『お前は日本人じゃねえだろ』とか」
――岡澤選手が受け流せる、気にしないでいられるのはもともとの性格なのか、友だちや家族など環境のおかげなのでしょうか。
「友だちじゃないですかね。地元でも、黒人を悪いこととして捉えていない人が多かったですね。言い方が悪いかもしれないですが、僕の一番の個性としてみんながいじってくれていたし、自分も悪いものではないと思っているし。言われたところで別に恥ずかしいことでもない。(攻撃的な言葉は)明らかに間違っているのは相手なので、そんなに気にすることじゃないかなって思いますね。
(苦労した話は)本当に何もないんですよ。身長みたいに、一つの僕の特徴として捉えています。両親が日本人でも、僕より肌が黒い人はいるじゃないですか。その人も黒いという特徴がある人。僕も黒いという特徴がある人。同じだと思っています。黒人というカテゴリーに分けるという言い方をされると嫌な人もいるのかなとは思いますけどね。
そういう分け方がなくなって、黒いものは黒いって言えばいいと思うし、黒いのが嫌いな人は黒いのが嫌いで別にいいし。肌が黒い人に対して、『俺、黒いのが嫌なんだよね』『一緒にいたらちょっと圧を感じて嫌だ』という人もいるかもしれない。それはそれで一つの意見だと思います。それでいいんですけど、『黒人』として括るより、『黒いという特徴』として捉えてもらった方が変なカテゴライズをして嫌な気持ちになることはなくなるんじゃないかなと思います。
僕自身がそれに何か思うことはないです。黒人だからこそ、こういう特徴を持っているからこそ、人に見てもらえたり、目立ったり、(SNS上の)そういう人も僕をわざわざ見つけてそういうメッセージを送ってくれる。この特徴を持ったから良いところ、良くないところが出ているだけなのかなと思います」
――ご両親からは、肌の色について何か言われたことはありますか。
「何もないですね。でも、母親は黒人だと日本ではデメリットになることが多いから、勉強は人よりもできるようにさせられました。だから、母親はめちゃくちゃ厳しかったんです。『勉強だけはやれ』って。スポーツは才能が関わってくることだからやってもできないことがあるかもしれないけど、勉強はやればできることだから。
特に小学校、中学校の時なんて、人から遅れを取らないように『これだけは絶対に人に勝っているもの』ができるように勉強をやらせたと言っていました。『あなたは黒人として~~』とか、父親に黒人としての生き方を教えられたことはないですね」