箱根駅伝で栄光と挫折を経験 城西大・櫛部静二監督、寄り添う指導の裏にある「引きずった」過去
寮で選手と一緒に生活「挨拶一つで調子の良し悪しが分かる」
――寮にいないと、十分にコミュニケーションが取れないのですね。
「うちは学生の数が多いですし、練習だけだと全員と触れ合うことが難しい。寮だと、いろんな学生の表情が見られますし、生活面からいろんな情報を得るというのは実は競技レベルを高める上でもすごく重要なんです」
――生活面での厳しさ、安定がないと競技レベルも上がらないと言われます。
「まさに、そうだと思います。日頃から見ていると彼らの挨拶一つだけでも、調子の良し悪しが分かるようになります。ちょっと元気ないなと思った学生に声をかけることで、練習での姿勢が変わったりします。僕にとっては、競技面だけではなく、普段から学生の調子を把握する、学生の調子の変化を知るための気づきでもあるので、そこは寮にいることの大きなメリットだと思っています」
――寮や練習中に声を荒げることはありますか。
「もともと、そんなに怒るタイプではないですし、今は学生の競技への意識が高くなっているので、怒ることはほとんどないですね。日々のルーティンは言われなくてもやっていますし、あとはジョグの際にできるだけ長い距離を踏もうとか、怪我予防のためにセルフケアをきちんとしようとか、そういうのは時々言うようにしています。慣れてくると適当にやりがちなので」
――駅伝で結果が出て、チーム状態が良くなるにつれ、寮での学生の生活面で目に見えての変化はありましたか。
「駅伝や個人でも結果が出るようになってからは、競技に対する意欲や意識が高くなっています。その1つの表れとしては、リカバリーを大事にするようになりました。特に睡眠の重要性ですね。うちは消灯が午後10時なんですけど、以前はその時間になってもパラパラと灯がついている部屋があったんです。言ってもなかなか直らなかったんですけど、今は消灯時間にはすべて電気が消えています。寝ているかどうかは分からないですけどね(笑)」