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「指導者が口を挟まない」リーグ戦を計画 部員減る高校ラグビー、強豪監督が描く未来

「ラグビーを楽しめた」記憶を持って巣立ってほしい

「やり方自体は、神奈川での取り組みと全く同じです。リーグっぽいものを作りますけど、チーム数が限られているので、すべてのゲームを消化しなくていい。公式戦で出場時間が少ない選手たちを優先的に出してあげて、チーム同士の試合の後は両チームミックスしたゲームをしたり、アフターマッチファンクション(試合後に互いの健闘を称え合う交流会)をやったり。指導者が口を挟まないことを義務化することで、彼らにとっても公式戦で勝つための手段にそのゲームを使わないように、完全に切り離されたラグビーの空間を並立させたいと考えています。花園は、チームを強化するには非常に使いやすい便利な手段なんですけれど、これはオンリーワンの目的ではないと思います。本当は花園に行ってから言いたかったんですけどね」

 そう苦笑したゴロー先生だが、ブレないのは子供たちにラグビーを楽しんでほしいという思いだ。手痛い過ちや、ほろ苦い経験が高校生を成長させるのは否定しない。だが、それに先立って絶対に譲れないのは、子供たちに「ラグビーを楽しめた」という記憶を持って、高校を巣立っていってほしいという願い――。ゴロー先生の語る言葉に、強い思いが滲む。

 1つ、背筋が凍る数字を紹介しておこう。

 九州でジュニア、ユース層の育成・普及にも力を注ぐ関係者からいただいたデータだが、昨季の花園で優勝した東福岡高がある福岡県の高校生の競技人口は2022年度で1077人だった。この人数は、10年前の2012年度と比べると75.4%に減少している。全国有数の“ラグビーどころ”でも、10年で4分の1の選手が消えている。九州エリアで最も減少が激しい沖縄県では41.9%と、下落に歯止めがかからない。

 そして、この数字は九州に限ったものではない。特効薬はない問題だが、ゴロー先生のような一部の教師、監督らが各地域で模索し、着手しているささやかな挑戦も、勝つだけに特化した強化とは別の、競技人口の減少を少しで抑えようという取り組みでもある。

 チームに話を戻すと、グラウンド外の1つの新たな挑戦が目前に迫っている。

「学校の公欠は認めてもらい、ラグビー部の有志7人で3月4日から10日間の弾丸ツアーで行ってきます」

 こう明かしたのは、インドでのスラム街などでの子供たちとの交流活動だ。実は、同志社大ラグビー部が、パンデミック前に着手した独立行政法人国際協力機構(JICA)の事業の一環として、今年再開する同国でのラグビー指導活動とも連携した取り組みだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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