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週6時間練習だけでは「絶対勝てない」 異色のラグビー監督、時短部活で花園挑戦の1年

異色のラグビーコーチの新たな挑戦の1年が終わった。昨年度まで平塚工科高校ラグビー部を率いていた松山吾朗先生が、静岡聖光学院高校ラグビー部監督に就任して初めてのシーズン。赴任前は神奈川県教員として、平塚工ラグビー部を部活とクラブチームという“二刀流”で運営するなど、前例に囚われない部活に取り組んできた。「時短練習」「自主性」などユニークな部活で花園出場を果たしている新天地での1年目の挑戦は県予選決勝で敗れたが、試行錯誤のなかで新たな聖光らしさも模索してきた。全国を目指しながら新しい部活の形を追求する“ゴロー先生”に、就任1年目の足跡と2年目の挑戦を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

常にピッチの上で選手に声をかけ続ける松山吾朗監督【写真:吉田宏】
常にピッチの上で選手に声をかけ続ける松山吾朗監督【写真:吉田宏】

静岡聖光学院ラグビー部「ゴロー先生の挑戦」前編、新天地1年目の模索した日々

 異色のラグビーコーチの新たな挑戦の1年が終わった。昨年度まで平塚工科高校ラグビー部を率いていた松山吾朗先生が、静岡聖光学院高校ラグビー部監督に就任して初めてのシーズン。赴任前は神奈川県教員として、平塚工ラグビー部を部活とクラブチームという“二刀流”で運営するなど、前例に囚われない部活に取り組んできた。「時短練習」「自主性」などユニークな部活で花園出場を果たしている新天地での1年目の挑戦は県予選決勝で敗れたが、試行錯誤のなかで新たな聖光らしさも模索してきた。全国を目指しながら新しい部活の形を追求する“ゴロー先生”に、就任1年目の足跡と2年目の挑戦を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 駿河湾を見下ろす小高い丘に建つ学び舎には、緩やかな時間が流れる。エメラルドグリーンに輝く人工芝グラウンドに、授業を終えたラグビー部員が1人、また1人と集まってくる。

「今月からやっと90分に戻ったんですよ。(昨年)11月からは60分だったので厳しかったですね。だから、ウォーミングアップもクールダウンもないです。体に悪いですよね。でも練習が始まる前に全部済ませて、ダウンは任せるよと部員には話しています」

 1年中褪せることがない日焼けした顔をくしゃくしゃにして笑う姿は、平塚工時代と変わらないが、ゴロー先生が挑む世界は激変した。神奈川県の自宅から往復4時間半の新幹線通勤に、全国を目標に据える強豪私立校の監督。それでも「らしさ」は貫いた。昨年度までとの違いを聞くと、迷わずこう語ってくれた。

「いや、変わらないですね。県大会の決勝であれ、平塚工の県大会の1回戦であれ、本当に勝ちたいと思ってベストの準備をすることと、そのプロセスを彼ら(部員)と話しながら決定していくことだったり、準備も、やることも、やる温度も、それは1つも変わってないです」

 平塚工での取り組みは昨年掲載の本コラムを参照していただきたいが、ゴロー先生が常に思うのは、高校生たちにラグビーの楽しさを感じてもらうこと。そのベースの上に、彼らの置かれた状況に応じて指導者として必要なものを準備して、ラグビーに打ち込むための環境を作ることに力を注いできた。平塚工では「彼らがキラキラするような経験を積み重ねることを最優先してきた」という。いかにラグビーを辞めさせないか、一度は離れた子供を楕円球に引き戻す挑戦を続けてきたが、新天地でのこの1年は「楽しさ」という土台の上に、勝ち抜くことにも取り組んできた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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