結婚が「大きな転機になった」 一山麻緒のコーチが見た変化、“3食自炊”の姿に感服
選手1人ひとりの才能を見抜き、個を伸ばしていく陸上指導者の、独自の育成理論やトレーニング法に迫るインタビュー連載。今回は五輪に4大会連続で出場した福士加代子を育て、現在は昨年の東京五輪女子マラソンで8位入賞を果たした一山麻緒を指導している、資生堂ランニングクラブの永山忠幸コーチに話を聞いた。一山を東京五輪出場に導いた当時の練習を振り返りながら、昨年12月の結婚がアスリートとしての心技体の充実につながっていると指摘している。(取材・文=佐藤 俊)
連載「陸上指導者の哲学」、資生堂ランニングクラブ・永山忠幸コーチインタビュー第3回
選手1人ひとりの才能を見抜き、個を伸ばしていく陸上指導者の、独自の育成理論やトレーニング法に迫るインタビュー連載。今回は五輪に4大会連続で出場した福士加代子を育て、現在は昨年の東京五輪女子マラソンで8位入賞を果たした一山麻緒を指導している、資生堂ランニングクラブの永山忠幸コーチに話を聞いた。一山を東京五輪出場に導いた当時の練習を振り返りながら、昨年12月の結婚がアスリートとしての心技体の充実につながっていると指摘している。(取材・文=佐藤 俊)
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永山忠幸が専任コーチとなり、一山麻緒とともに資生堂へ移籍したのは、今年3月だった。東京五輪の女子マラソンで8位、2024年パリ五輪の女子マラソン代表の有力候補であり、ワコールのエース格でもあった一山と監督の移籍は衝撃的だった。
一山は福士加代子に憧れ、鹿児島から関西に移り、ワコールで競技生活をスタートさせているが、2人の個性は全く異なっていたという。
「福士くんと一山くんは、まったく個性が異なりますね。トラックでは福士くんの領域に一山くんがなかなか入ることが難しくて、早めにマラソンに切り替えました。彼女自身もマラソンで日本代表になって五輪に出るというのが夢でしたから、福士くんがトラックにかけていた時間をかなり短縮して、マラソンに挑戦させていきました」
一山は、2019年3月の東京マラソンでマラソンデビューを飾り、同年4月のロンドンマラソンでMGCワイルドカードを獲得した。同年9月のMGCは6位に終わり、東京五輪女子マラソンの代表を逃したが、ラストチャンスとなる20年3月の名古屋ウィメンズマラソンが残っていた。その間、五輪への切符を勝ち取るべく、永山コーチはこれまで一山が経験したことがないメニューを提供した。
「名古屋の前は5キロ8本をやりました。その時、いろんな人に『男子でも5キロ4本ですよ』って言われたんです。でも、マラソンは42.195キロで、それを5キロで割ったら8本じゃないですか。単純にそういう考えを一山には伝えていました。難しいことを言って取り組ませてしまうと彼女が身構えてしまうので」