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社会人に必要なことは何か ラグビー元代表選手2人と学校経営者が考える「社会性」

ラグビー元日本代表と体を動かす児童たち【写真:松橋晶子】
ラグビー元日本代表と体を動かす児童たち【写真:松橋晶子】

ラグビーは「コミュニケーション能力がないとできないスポーツ」

小野澤「ラグビーは太った人もいれば、足が速い人もいて、パスが上手な人もいる。元々は1チーム15人ですが、ある瞬間のチーム構成はバラバラ。例えば、モールという状態からボールが出る時、パスを回すラインにいるのが『足が速い人、足が速い人、パスが上手い人』という並びの時があれば、『当たるのは強いけど足が遅い人、パスはそこそこな人、足が速い人』という並びの時もある。その瞬間でどうしたら最善の策が取れるか、問題解決をしていかないといけないんですよね」

山口「それは会社と一緒ですね」

小野澤「そうなんです。ひたすら問題解決をしている状態なので、自然とみんな仲が良くなります」

菊谷「僕はチームに外国人の監督さんがいたり、海外でプレーしていたこともあるんですが、そういう環境では与えられるのを待って、ずっと受け身のままでいると何も生まれないんです。海外のチームでは選手はみんな質問したい時はどんどん質問する。自分がいいプレーをするための環境設定は自分でしないといけない。大人になってから、そういうところにずっといました(笑)。でも、ラグビーというスポーツ自体が、そもそもコミュニケーション能力がないとできないスポーツというのもあるかもしれません」

小野澤「ラグビーは、先頭にあるボールを後ろにパスしながら前に進むスポーツ。後ろを見ながらパスは放れないので、ボールを持った選手は後ろからの声に従って投げるしかない。要はひたすらスイカ割りのような状態でパスをつなぐんです。しかも、ボールが楕円なので地面に着くとどこに行くか分からない。ノーバウンドでパスする方がいいんですけど、この時も横にいる選手との距離感を言葉で伝える能力が高い方が、プレーの精度も上がります。

 僕はウイングというオフェンスラインの一番端っこで足の速い人がするポジションなんで、大体ボールが回ってくるのは最後なんです。だから、80分間、ひたすら人の背中に向かって喋り続けるんですよ。その時に伝える言葉も、感覚がハマる選手、数字がハマる選手、視覚情報として『あの線まで出よう』という伝え方がハマる選手、それぞれ違うんです。だから、選手に合わせた声掛けをしようと工夫するんですね」

山口「どうやってコミュニケーションを取っているのか謎だったんですが、そういうことなんですね」

小野澤「声だけじゃなくて『分かったよ』と手を挙げる人もいたり。僕もポンと肩を叩いたり、スクラムの後は遠くから『いいね!』と声を掛けるだけじゃなくて、わざわざ駆け寄って組んだ選手の背中を触りに行ったり。声を掛けるより触った方が気持ちが伝わることはありますから」

菊谷「僕が日本代表のキャプテンをした時は、バックスラインの一番外側にいる小野澤さんが、話をしたい時に全員をダッシュで引き連れてきてくれるんですよ。僕がいざ話をしようという時には、小野澤さんが『もう準備はできているよ』という笑顔を見せるんです(笑)。試合中、プレーの合間に僕が話をできるのは30秒ないくらい。そうなると、5秒間で集まるのと15秒間で集まるのでは、伝えられる話の内容が変わってきますからね」

小野澤「今日も子供たちにチームでの作戦タイムは1分間と制限をかけました。1分の中で、問題を抽出して解決する。作戦を立案してみんなで共有する。そこで初めてプレーにつながるわけです。プレーばかりが評価される世の中ではなく、そこまでの過程が重要であることも理解してもらいたいですね」

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