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行動に移せる子、移せない子の差 神野大地が安定を捨て、挑戦を続けられる理由

神野が実業団の“安定”を捨て、挑戦を選んだ原動力とは

「チャレンジの大切さ」について語った神野大地(左)と山口紀生氏【写真:松橋晶子】
「チャレンジの大切さ」について語った神野大地(左)と山口紀生氏【写真:松橋晶子】

――実業団はある種の“安定”があり、日本のアスリートの場合はそちらを求めることも多いと思います。それでも、挑戦を選んだ一番の原動力は何だったのでしょうか。

神野「一番は東京五輪という目標がありました。実業団は恵まれていると思います。給料も安定し、確実に頂ける。ただ、朝練をしてから会社に行き、長期合宿で空ける時もあるから、任される仕事がほぼないんです。それで何かの知識がつくかというと、これもほぼありません。自分がいた会社は朝練をして、午前8時半から午後2時まで働き、2時半からまた練習です。

 この『8時半から2時まで』を陸上に使った結果、五輪に行けるか、行けないか。先ほどもお話しした通り、自分は才能がないところから、周りよりプラスアルファをこなすことで成長してきたので、より新しいことに挑戦したかった。例えば、ケニアに行ったりエチオピアに行ったりして自分がどうなるか。その景色が見たかった。後悔したくないというのが一番です」

山口「私も昔、教員をしていた時代がありました。朝8時半から夕方5時半まで働き、その時間は自分で生きている感覚が100%じゃなかった。それを取り戻したくて6年間で辞めた。その感覚を思い出しました。24時間、自分の時間として取り戻してやろうと。その後、私が教員を辞めたことを聞いた近所の人から、うちの子の勉強をみて欲しいと頼まれた。学校でできなかったこと、つまり子どもを連れて遊びに行くことをさせてもらうことを条件に引き受けた。

 遊びを教える人が勉強も教えるのはとても効果があり、学力も驚くほど伸びた。勉強だけに焦点を当てるのではなく、生きることの喜び、楽しさを伝えると学力も伸びていく。それを感じているから、私は今も人を育てたくて教育をやっている。私たちの学校はどうしても英語教育がクローズアップされるけど、人を育てる手段の一つに英語があるというもの。まずは子どもたちの夢、目標を育み、それを実現できる人間を育てたいという目標を持ってやっています」

――私たちも株式会社の小学校としてチャレンジを続けていますが、今も五輪に向けてチャレンジしている神野選手はその先の未来に描いていることは何かありますか。

神野「まずは今しかできないことを全力でやりきることです。競技をして五輪を目指すのは今しかできない。引退した後を見据えるというより、大きな目標のために日々努力すること。ただ、将来的に走ることの楽しさは伝えていきたい。今は野球、サッカーをやりたい子が多いけど、走りは頑張ったら1秒、2秒って上がっていく。今、市民ランナーが増えているのは、ちょっと頑張ったらタイムが伸びる、うれしいからまたちょっと頑張ると……。

 人間は成功体験を感じることが幸せなので、増えているのかなと思います。陸上は駅伝だったら、チームに迷惑をかけるかもしれないけど、マラソンは自分自身との戦い。勝った負けたで評価、批判するより、誰もが楽しめるところに良さがある。でも、自分は駅伝ももちろん好きだし、みんなで箱根優勝という一つのために365日頑張ることは楽しかった。青学は部員が約50人いて10人のメンバーに入るために頑張り、精神的にタフになりました」

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