行動に移せる子、移せない子の差 神野大地が安定を捨て、挑戦を続けられる理由
5月のある日、神奈川・相模原市内の閑静な住宅街にある小学校に「山の神」がいた。東京五輪を目指す陸上長距離の神野大地(セルソース)だ。訪れたのは、LCA国際小学校。9月にマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を控え、多忙を極めるトップ選手が練習の合間を縫ってやって来たのは、なぜなのか。
神野大地×LCA国際小学園長・山口紀生対談後編、陸上と教育の「チャレンジの大切さ」
5月のある日、神奈川・相模原市内の閑静な住宅街にある小学校に「山の神」がいた。東京五輪を目指す陸上長距離の神野大地(セルソース)だ。訪れたのは、LCA国際小学校。9月にマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を控え、多忙を極めるトップ選手が練習の合間を縫ってやって来たのは、なぜなのか。
同校は日本でも稀な、株式会社が運営する私立小学校。バイリンガルスクールで、外国人の担任が授業の大半を英語で行う。しかし、単なるインターナショナルスクール的な学校というわけではない。同校がこだわっているものが“本物”に触れることだ。その一環として、一流アスリートを定期的に招いた体育の授業を実施している。神野はアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏が授業を受け持つ授業のゲストとして呼ばれ、児童たちに走る楽しさを説いたのだ。
LCA国際学園の創始者でもある学園長は山口紀生氏。78年に大学卒業後、公立小学校で教師としてキャリアをスタートさせたが、85年に私塾「LCA」を設立。英語教育に携わり、91年に株式会社エル・シー・エーを設立。08年に「LCA国際小学校」として文科省から認可を受け、日本初の株式会社立小学校校長に就任した。1クラス20人の少人数制のきめ細やかな指導で、毎年多くの名門中学に卒業生が羽ばたいているが、今回、神野をゲスト講師に招き、対談も実施した。
同校の教育事業全体を網羅するマネージャーでサッカーの名門海外クラブのジュニアコーチも務めていた今井 洋介氏が進行役を務め、スポーツと教育という分野から“人を育てる”というテーマについて互いの立場から考えを交わした。後編の今回は「チャレンジの大切さ」について。
◇ ◇ ◇
――神野選手の競技人生においては、青学大・原監督との出会いが大きかったと思いますが、それ以外に成長のきっかけとなったことはありますか。
神野「人生を振り返ると節目、節目で凄く良い出会いがあったんです。人生は選択に迫られる時期があるけど、『こっちだ』と決めて進んできて、全く後悔しない道を生きている。だから、やりたいことがあったらまずは挑戦してみるというのは子どもたちに伝えたいこと。3年後、5年後にあの時に挑戦していたら、自分どうなっていたのかと思ってしまう。物凄く成長していたかもしれないし、ダメだったかもしれないけど、やらなかったら何も生まれないので。どんどん挑戦してほしいと思っています」
山口「ただ、多くの人はそれを頭では理解していて、やりたい、挑戦したいと思っても、実際に行動に移せない人も少なくない。行動できる人は何が違うのでしょうか」
神野「決断力も大事ですが、小さい頃に挑戦をしていけば、大人になっても『あの時にああいう挑戦してみて良かったな』と挑戦の経験値が上がり、何事も踏み込みやすくなるのかなと。自分もプロランナーに転向しようと考えた時、収入がどうなるのかという不安よりもやりたい、やらないと一生後悔すると思った。結果、五輪に行ける、行けないということに結び付くことがあると思うけど、挑戦したことは絶対後悔しないと思ったので、実業団ではなくプロランナーという選択ができたと思います」