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サッカーの練習に走りの“量”は必要なし オランダの無名指導者が変えた旧来の常識

レイモンド・フェルハイエンは、オランダのU-17代表に選ばれたが、その直後には故障で選手生活を断たれてしまった。なぜ、こんなことになったのか、彼は自分が取り組んできたトレーニングに疑問を抱き、サッカーの「ピリオダイゼーション理論」を確立し、26歳でオランダサッカー協会(KNVB)の指導者への講師に抜擢されている。

フェルハイエンはサッカーの練習に走りの“量”は必要ないと、唱えている【写真:photolibrary】
フェルハイエンはサッカーの練習に走りの“量”は必要ないと、唱えている【写真:photolibrary】

26歳でオランダのスーパースター4人を賛同させた「ピリオダイゼーション理論」

「ただたくさん走らせるトレーニングは、速筋を遅筋に変えてしまい、爆発的な動きができない選手を作る」――レイモンド・フェルハイエン

 レイモンド・フェルハイエンは、オランダのU-17代表に選ばれたが、その直後には故障で選手生活を断たれてしまった。なぜ、こんなことになったのか、彼は自分が取り組んできたトレーニングに疑問を抱き、サッカーの「ピリオダイゼーション理論」を確立し、26歳でオランダサッカー協会(KNVB)の指導者への講師に抜擢されている。

 この時のエピソードが秀逸だ。

「私が書籍にした理論にオランダ協会が着目し、4人の前で講義をすることになった」

 受講者は、ヨハン・ニースケンス(アヤックスで欧州クラブ3連覇、ワールドカップ2大会連続準優勝の主力)、ルート・フリット、ロナルド・クーマン、フランク・ライカールト(いずれも1988年欧州選手権優勝の中核、クラブレベルでも欧州制覇)で、それはそのままオランダサッカーの歴史を象徴するようなスーパースターたちだった。フェルハイエンの理論は4人の賛同を得て、オランダ協会をはじめ、欧州の各有名クラブへと浸透していくのだ。

「せっかくトレーニングをしても、それが試合に活かされている感覚がなかった。例えば、サッカーでは短いスプリントを何度も繰り返す。ところがトレーニングでは、たくさん走らなければならないと言われ、ゆっくり走っていることが多かった。逆に4対4や3対3などをこなした後は、コンディションが上がっていると実感できた」

 フェルハイエンは続けた。

「1日に二度のトレーニングをした後などは、疲労も抜け切らず、100%試合にも集中できない。キックオフの段階で、すでに疲労を感じて、シーズンが深まれば、その疲労が確実に蓄積していった」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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