我が子の「厳しい指導者」を務める親へ 三宅宏実が“喧嘩と尊重”で築いた親子関係
「どんなに喧嘩しても戻って来られるのが親子の良さ」、指導者の親へ伝えたいこと
何事も最短距離で答えに導いてあげることだけが「親の正解」じゃない。三宅は遠回りを繰り返し、失敗の理由を自ら考えてきたことで、たどり着いた答えが本当の意味で自分のものになった。「本当に指導者の方はひたすら我慢が必要だと思います」。放任主義が一概に正解というわけではないが、見守ることの大切さも知っておく必要がある。
中学3年で競技を始めた時から胸にあった、父をリスペクトする姿勢。これと同じくらい父も娘を尊重しているからこそ、親子の歯車はうまく回ってきた。他人ではなく、親が指導者である場合の決定的な違いについて、こう考える。
「家族だからぶつかれる良さがあるんですよね。これが他人だったら絶対に戻って来られない。でも、家族だから。最終的な目標も同じだからこそ、どんなに喧嘩をしても戻って来られるのが親子の良さです。もう喧嘩して喧嘩して言い合って。そうじゃないと、互いを尊敬し合い、信頼や絆は築けないと思います。
私と父の場合は、異性なのでさほどぶつからなかったということもあると思います。同姓だったら意外とぶつかるんですよ。(幼少期から)母にピアノを教わっていた時は、もの凄く母とぶつかっていました。でも、父とはいい距離感です」
親が期待しすぎるあまり、楽しかったはずのスポーツをいつの間にか親のためにやっている子がいるかもしれない。親は自分の子どもなら何を言ってもいいわけではない。
自分の子どもを指導する親へ、父とマンツーマンで戦ってきた五輪メダリストはメッセージを送ってくれた。
「もっと近道があると思っていても、いつも子どもを見守る。年齢にもよりますが、怪我はさせないようにしながら見守ること。それが私の性格を理解し、尊重してくれている父の指導者としてのやり方です。私も凄くありがたいですし、やりやすく頼りがいがあります。
子どもは子どもなりに一生懸命に頑張っている。ただでさえいろんなことを抱えているので、寄り添ってほしい。困っている時はさりげなく言葉をかけたり、いいタイミングで寄り添ったりしてもらえたらいいのかな。でも、それは私の性格なのでそれぞれの性格に合わせた寄り添い方ができれば、より良い距離感でバランスを取れると思います」
我が子にスポーツを教えるお父さん、お母さん。今、口から出そうなその言葉を発する前に、ちょっと立ち止まって考えてみてはどうだろうか。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)