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真剣さと自由さが同居する早大サークル 日常を明るく照らすフィンスイミングという光【#青春のアザーカット】

学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、コロナ禍を経験した世の中はどこか慎重で、思い切って全力まで振り切れない何かがある。

フィンをつけストリームラインの姿勢で泳ぐ姿はまるでイルカか人魚のよう【撮影:南しずか】
フィンをつけストリームラインの姿勢で泳ぐ姿はまるでイルカか人魚のよう【撮影:南しずか】

連載「#青春のアザーカット」カメラマン・南しずかが写真で切り取る学生たちの日常

 学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、コロナ禍を経験した世の中はどこか慎重で、思い切って全力まで振り切れない何かがある。

 便利だけどなぜか実感の沸かないオンライン。マスクを外したら誰だか分からない新しい友人たち。そんな密度の薄い時間を過ごした後、やっぱりリアルは楽しいと気付かせてくれたのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。

「今」に一生懸命取り組む学生たちの姿を、スポーツ・芸術など幅広い分野で活躍するプロカメラマン・南しずかが切り取る連載「#青春(アオハル)のアザーカット」。何よりも大切なものは、地道に練習や準備を重ねた、いつもと変わらない毎日。何気ない日常の1頁(ページ)をフィルムに焼き付けます。(取材・文=THE ANSWER編集部・佐藤 直子)

26頁目 早稲田大学フィンスイミングチーム SIXBEAT 3年・深澤瑞季さん、3年・山田陽平くん、2年・平岩佑陸くん、2年・櫻井華保さん

右から山田くん、深澤さん、櫻井さん、平岩くん【撮影:南しずか】
右から山田くん、深澤さん、櫻井さん、平岩くん【撮影:南しずか】

 戸山キャンパス内にある高石記念プール。大きな窓から差し込む午前の太陽が柔らかな光で空間を包み込む。キラキラと外光が反射する水面の下で行き交う、しなやかな流線型の影。その優雅でスピーディな泳ぎは、まるでイルカか人魚のようだ。

 足にフィン(足ひれ)をつけて泳ぐフィンスイミングは、1950年代にスクーバダイビングの発展とあわせてヨーロッパを中心に広まっていったという。イルカの足ひれのような1枚のフィンを両足揃えて履くモノフィンと、ダイビングのように片足ずつ履く2枚のビーフィンがあり、両腕を頭上で組むストリームライン(流線型)で全身を波のようにうねらせながら泳ぐ姿勢を基本とする。

 魅力の一つは圧倒的なスピードにある。大きなモノフィンをつけて泳ぐとスピードは競泳の約1.5倍になり、ビーフィンでも推進力は30%アップするという。日本ではまだなじみの薄いスポーツかもしれないが、1976年に世界選手権が初開催され、”第2のオリンピック”と呼ばれるワールドゲームズでは1981年の第1回大会から正式種目として実施。日本でも1989年から日本選手権が始まった。

 SIXBEATが誕生したのは2003年のこと。今年で20年目を迎えるサークルは、インカレや日本選手権で男女総合優勝を飾るハイレベルなメンバーから、楽しく泳ぎたいというマイペースなメンバーまで、男女あわせて84人が集う。練習は月曜から土曜の午前9時スタート。それぞれが自分のペースでプールへやってくる。

 水中に入ると、そこは無音の世界。フィンの力を借りながら競泳では味わえないスピードで泳ぐと、頭も心もスッキリと晴れる。そんな爽快感に加え、真剣さと自由さが心地よく同居するサークルの雰囲気に惹かれ、仲間に加わったメンバーも多い。

 昨年度の幹事を務めた深澤さんと山田くんも例外ではない。

コロナ禍の影響が色濃い2021年に入学「学部の友達が全然作れなかった」

中長距離のモノフィンをメインとしている深澤さん【撮影:南しずか】
中長距離のモノフィンをメインとしている深澤さん【撮影:南しずか】

 中学まで競泳に励んでいた深澤さんは、大学入学後にどのサークルに入ろうかと迷っている時、「選択肢の一つとして」高石記念プールに足を運んだ。「最初は水泳とは違う競技をしようと決めていたんですけど……」。モノフィンやビーフィンを履き、驚くような速さで自由に泳ぐ先輩たちの姿を見た時、「これがいい!ってビビッと来た感じでした。チームの雰囲気がすごく良くて、競泳とは違った形でもう一度泳ぐことにチャレンジしてみたいと思いました」と振り返る。

 附属高校に通っていた山田くんは水泳部の先輩に誘われてSIXBEATに加わった。アットホームな雰囲気に惹かれ、競泳からフィンスイミングに転向。小学5年生から8年にわたる競泳歴がアドバンテージになるかと思いきや、「フィンを身につけることで体の使い方が変わってくるので、始めた時はそこに苦戦しました」と明かす。徐々にコツを掴んできた1年生の夏休みには、「ほぼ毎日練習に来ていました(笑)」。先輩に泳ぎ方を教わるたびに泳ぐスピードが増し、楽しさも増した。

 現在3年生の2人が入学したのは2021年。まだコロナ禍の影響は強く、誰もがマスクを手放せずに暮らしていた時期でもある。授業はオンラインが中心で、休講になることもしばしばあった。「学部の友達が全然作れなかったので、その時にサークルの友達や先輩がいてくれた意味は大きかったです」と山田くん。「ここに来れば誰かがいて、楽しい時間を過ごせる。まさに“居場所”っていう感じでした」と深澤さんが言うように、人と人との繋がりが希薄になりかねない状況の中、まさに心の渇きを満たすオアシスのような場所になっていた。

幹部メンバーとして、みんなが愛着を持てるサークル運営に励む

「泳ぎのきれいさは誰にも負けません」と自信を見せる山田くん【撮影:南しずか】
「泳ぎのきれいさは誰にも負けません」と自信を見せる山田くん【撮影:南しずか】

 2年生で幹事となった2人は、思わぬ難しさに直面する。

深澤「競技面で上位を目指す部分と、サークルとして楽しさを目指す部分とでは、なかなか両立が難しくて……」

山田「みんなが楽しめサークルを目指しているので、幅広いレベル、かつ色々な目標を持った人をまとめながら、競技面での目標を達成する苦労はありました」

 授業やバイトに励みつつも「やっぱりチームのことを考えるのが中心の日々」(深澤さん)。何度も何度も幹部で集まり、メンバーみんなが愛着を持てるサークルであるためのアイディアを出しあった。だからこそ、インカレや日本選手権の総合優勝はたまらなく嬉しいが、ノースイミングで実施した合宿の楽しさも同じくらい大きな充実感が得られた。

 同期17人に加え、先輩も後輩もチームにいる全員が“仲間”だ。

山田「初心者でも自己ベストを出して成長している姿だったり、世界選手権に出場したり大会で結果を残す人がいたりすれば、やっぱり刺激になる。サークルの活動に限らず、みんなで旅行に行くこともあるので、いい仲間です」

深澤「私はこれまでチームで何かをする経験があまりなかったので、自分にとってかけがえのない時間と今後に続く関係を与えてくれた人たちだなと」

 この想いは次の代にもしっかり引き継がれている。

できる限り多く練習に参加したい、と授業の組み立てを工夫

新幹部としてみんなが同じ方向へ進めるよう取り組んでいる平岩くん(右)と櫻井さん【撮影:南しずか】
新幹部としてみんなが同じ方向へ進めるよう取り組んでいる平岩くん(右)と櫻井さん【撮影:南しずか】

 9月から新たに幹部となったのが、2年生の櫻井さんと平岩くんだ。

 高校まで競泳に励んでいた櫻井さんは、大学でも競泳サークルに入ろうと思って高石記念プールにやってくると、その隣でSIXBEATが活動をしていた。「チームの雰囲気がすごく良かったんです。楽しそうだったし、みんな優しいし、競技にも本気で取り組んでいるし。フィンスイミングをやりたいというよりチームの雰囲気が好きで入りました」と笑顔を浮かべる。

 同じく高校まで競泳選手だった平岩くんは、大学では何か新しいことを始めたいと考えていた。実は競泳の練習でフィンを使うメニューがあり、「その練習が大好きで、フィンだけの種目あるならすごく楽しそうだなって思っていたんです」。そこで迷わずSIXBEATの門を叩いた。

 フィンスイミングには、シュノーケルを含む体の一部を水面に出して泳ぐサーフィス、息継ぎをしない潜水で競うアプニア、スクーバ器材を装着して潜水のまま泳ぐイマージョンの3種目があり、これらはモノフィンで行われる。その他、ビーフィンを使ってクロールで競う種目もあり、櫻井さんも平岩くんも200mビーフィンを得意とする。平岩くんは競技を始めて1年も経たないうちに日本新記録を叩き出し、2022年度の新人賞に選ばれた。

「やっぱりスピード感が一番の魅力。フィンを付けて泳ぐことが楽しいっていうのは、今でもずっと続いています」という平岩くん。所属学部が拠点を置くのは埼玉・所沢キャンパスだが、「練習にいっぱい参加したいので、授業の組み立てを工夫して、曜日によって行くキャンパスを変えています」と戸山キャンパスにも足繁く通うなど、すっかりフィンスイミングに心を奪われている。

 週4回ほど練習に参加するという櫻井さんも「私が学生生活の8割くらいをサークルが占めているなと(笑)。もちろん競技を頑張りたいのもあるけど、このチームが好きだし、泳ぐのが楽しいんです。朝は絶対プールに行きたいので、1限目には授業を入れないようにしています」と笑う。

 2人にとっても、プールで過ごす時間は心のオアシスになっている。

SIXBEATで知った「一人ではなく、チームで何かをやり遂げる」楽しさ

高石記念プールは気の置けない仲間と会話ができるオアシスになっている【撮影:南しずか】
高石記念プールは気の置けない仲間と会話ができるオアシスになっている【撮影:南しずか】

 9月中旬のある日、いつもの練習が終わった後、取材のために残った4人がプールサイドで会話する姿は、気取ったり繕ったりすることのない自然体。泳ぐことは真剣に、でも、今この瞬間を一緒に過ごせている喜びが、近くにいる人までも笑顔にする心地よい温かさを生み出している。

 楽しいことや嬉しいことだけじゃない。悔しいことも悲しいこともあるだろう。でも、プールに来れば笑顔になれる。そんな充実した大学生活を共有できる大切な仲間に出会えた。

深澤「ここでチームを引っ張っていく経験ができたことはすごく大きくて、色々なバックグラウンドを持った人たちと一つのチームを作り上げていく経験を今後も積んでいきたいと思います。フィンスイミングは細々とでも続けていきたいですね」

山田「チームで何かをする楽しさを経験してきたので、社会人になってからも一人ではなく、チームで何かをやり遂げることをやってみたいですね。僕も運動が好きなので、できればフィンスイミングは続けたいと思います」

櫻井「サークルのメンバーは大学で一番親しい友達、仲間っていう感じですね。この人たちがいるから、このサークルにいると言っても過言じゃない。入って間違いなかったです。フィンに限らず泳ぎは一生続けていきたいと思います」

平岩「このサークルがすごく好きで、大学生活の中でも重要度はかなり高いです。一緒に授業を受けたり、学食を食べたり、同期と話をするのが楽しいし、フィンもすごく楽しい。大会に参加する年齢層が結構幅広いので、ずっと続けていけたら楽しいだろうなって」

 毎日に光を差し込んでくれたフィンスイミングに感謝、だ。

【出演者募集】
プロカメラマンの南しずかさんが、あなたの部活やクラブ活動に打ち込む姿を撮りにいきます。運動系でも文化系でも、また学校の部活でも学校外での活動でもかまいません。何かに熱中している高校生・大学生で、普段の活動の一コマを作品として残したいという方(個人または3人までのグループ)を募集します。自薦他薦は問いません。
下記より応募フォームにアクセスし、注意事項をご確認の上、ご応募ください。皆様のご応募をお待ちしております。

■南しずか / Shizuka Minami

1979年、東京生まれ。2008年12月から米女子ゴルフツアーの取材をはじめ、大リーグなど主にプロスポーツイベントを撮影する。主なクライアントは、共同通信社、Sports Graphic Number、週刊ゴルフダイジェストなど。公式サイト:https://www.minamishizuka.com

南カメラマンが切り取った高石記念プールでの日常

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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