女子ゴルフで感動を呼んだ30代の復活劇 金田久美子らが見せた黄金世代の「お手本」
北田瑠衣が藤田さいき、菊地絵理香を「凄い」と称賛する背景
北田の言う「目に見えない力」とは、今年10月9日に57歳で亡くなった橋本道七三(みちひさ)キャディーの力だ。金田が小学6年だった2001年のツアーデビュー時から帯同キャディーになり、初優勝した直後まで約10年間、金田を支えてきた。その後はコンビを解消したが、金田がつけた愛称の「ピヨさん」は選手、ツアー関係者に広まった。
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橋本さんも、帯同キャディーの仕事を続け、今季は主に藤田のバッグを担いでいた。そして、金田の優勝から3試合後の大王製紙エリエールレディスで、藤田がトロフィーを手にした。会見でピヨさんと側で支えてくれている夫・和晃さんへの感謝を口にした。同じマネジメント会社に所属する北田は、今年7月、和晃さんが「脳腫瘍」と診断されていた事情も知っており、藤田の心を慮った。
「ご両親が長く闘病中で、旦那さんのこともありますし、彼女は『自分が頑張らなければ』という思いがさらに強くなったように感じます。ゴルフの成績が一番家族を元気にさせる。そういう中で、より頑張りたい気持ちが強かったように感じますが、平均ストローク(71.1624)も含め、キャリアハイの成績を残しながらの復活優勝は『凄い』のひと言です」
北田は、今季1勝でMR13位の菊地にも「貪欲さが凄い」と感心している。34歳の菊地は骨盤を元に位置に戻すため、ラウンド後に整体を受けているという。そうした努力の上で、「今の若手には、私がかじりついている姿を見てもらいたいです。結果が出ていない若手に可能性があることを示していくことも、役目かなと感じているので」などと話していた。
菊地は20代選手とも仲が良く、時に「絵理香さま」と呼ばれている。年の差を超え、互いにリスペクトがあるからだ。そして、菊地は「そのうち30代でも活躍できることが『当たり前』の時代が来ます」と断言。北田はこの言葉にも感心した。
「菊地さんの言葉には重みがあります。確かに30代になると、体の変化を感じて疲れも取りにくくなりますが、今はケアとトレーニング方法を工夫しながら、いろんなことに対応可能な時代になりました。現実に30代で上位にいる選手たちがいて、彼女たちが素晴らしいお手本になっています。
力のある黄金世代以下の選手たちは、10年後の自分をイメージし、『30代になっても活躍する選手が本物』という意識を持っていると感じます。そういった意味でも、今のツアー環境は理想的。この雰囲気が長く続くことを願っています」
■北田瑠衣/THE ANSWERスペシャリスト
1981年12月25日生まれ、福岡市出身。10歳でゴルフを始め、福岡・沖学園高時代にナショナルチーム入り。2002年プロテストで一発合格し、03年にプロデビュー。04年はニチレイカップワールドレディスでツアー初優勝し、年間3勝で賞金ランク3位。05年には宮里藍さんとペアを組んだ第1回女子W杯(南アフリカ)で初代女王に。06年から10年連続でシード権を保持した。男女ツアーで活躍する佐藤賢和キャディーと17年に結婚し、2児のママとして子育てに奮闘中。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)