恩師エディーとの忘れられないエピソード W杯で日本と激突、大野均が語る敵将の素顔
ティア1勢との試合から得る、かけがえのない経験値
「ニュージーランド代表オールブラックスと対戦したんですが、その試合は日本にとっては145点を奪われた1995年大会以来の直接対戦だった。なので、試合前からチームがすごくナーバスになっていて、必要以上に自分たちにプレッシャーをかけていた。試合が始まると、普通ならあり得ないようなミスをして、そこからイージートライを奪われた。そこでさらにどうにかしないと、という気持ちになって、再びミスをしてトライされるというゲームでした」
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結果は7-83の完敗だったが、試合後の大野氏は「80点獲られて負ける相手じゃなかった」と感じていた。
「もし、あの試合の前に南アフリカやイングランドのような、常にニュージーランドと対戦しているチームと1度でも対戦していれば、それなりの気持ちの準備ができたのかなと思いましたね。強豪国との試合経験が少ないので、相手を過大評価し過ぎてしまっていた。それが、その後の4年間で、エディーさんが強豪国との試合を組んでくれて、15年の南アフリカ戦に繋がっていると思うんです」
ティア1チームとの対戦を見ると、11年W杯後から15年までが4試合だったのに対し、15年大会後から19年までは10試合に増えている。このビッグマッチの数の推移が、日本代表の強化と緊密に関連していると大野氏は考えている。練習をハードに、時間をかけてやることも重要だが、強豪国との1試合で選手とチームが得る経験値はかけがえのないものだ。
「コロナの影響はありますが、2023年までの準備は、すごくいいものを積み上げていけるのかなと思います。19年の大会前までは、各国が日本国内で試合を経験しておきたいという理由があったが、19年大会のベスト8という結果もあって、今は日本代表と試合をしたいという国が増えている。僕らの時代では経験できなかった強豪との試合を経験できていることが、チームの強化に繋がっているのは間違いない。15年から日本の評価がどんどん上がってきているので、残る1年半でも得るものは大きいはずです」
大野氏が指摘するように、W杯プレ・イヤーの今年は、世界ランキング19位のウルグアイとの2試合(6月18、25日)をウォームアップに、7月2、9日には、今や北半球最強の称号を手にした世界ランク2位のフランスに挑み、秋にはイングランドとの前哨戦がある。W杯へ向けた強化として願ってもない強豪との試合が続くことは、本番でイングランドと渡り合うための経験値を上げるためには最高の触媒になるのは間違いない。
世界の強豪との戦いを重ねることで、手にする自信やティア1チームから受ける体感が、エディー・ジョーンズ率いるイングランドとの格差を埋めていくはずだ。18か月という残された時間を、どう過ごし、何を掴んでいくのか。日本で一番多くのテストマッチを戦った男も、期待と確信の中で、2023年9月17日、ニースの空に響くキックオフの笛を待つ。
【2023年W杯プールD・日本代表の試合日程】
9月10日 vsアメリカ地区2位(トゥールーズ)
9月17日 vsイングランド(ニース)
9月28日 vsサモア(トゥールーズ)
10月8日 vsアルゼンチン(ナント)
※現地時間
【日本代表の2022年試合日程】
6月18日 vsウルグアイ(秩父宮ラグビー場)
6月25日 vsウルグアイ(北九州・ミクニワールドスタジアム北九州)
7月2日 vsフランス(愛知・豊田スタジアム)
7月9日 vsフランス(東京・国立競技場)
11月12日 vsイングランド(英国・トゥイッケナム)
※3月30日現在(キックオフ時間未定)
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)