フィギュア女子選手の減量は「わりと壮絶」 10代は体型変化でスランプに陥る課題
元フィギュアスケート日本代表で「THE ANSWERスペシャリスト」を務める中野友加里さんは、ビギナーファン向けに競技にまつわる素朴な「17のギモン」に答えるミニコラムを大会期間中、毎日掲載。13問目は「フィギュアスケート選手の減量って大変?」。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#79 中野友加里が答える「17のギモン」13問目
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
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元フィギュアスケート日本代表で「THE ANSWERスペシャリスト」を務める中野友加里さんは、ビギナーファン向けに競技にまつわる素朴な「17のギモン」に答えるミニコラムを大会期間中、毎日掲載。13問目は「フィギュアスケート選手の減量って大変?」。
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銀盤で華麗に、軽々とジャンプを跳んでいるフィギュアスケート選手。しかし、その裏に厳しい体重管理がある。特に、女子選手は繊細な調整が求められるという。中野さんが経験談とともに明かす。
「やはり、体重はジャンプに大きく影響します。理由は単純。500ミリリットルのペットボトルを飲めば、500グラム重くなる。滞空時間は短くなり、回転速度も落ちやすい。鉛筆をイメージすると分かりやすいですが、細い物は速く回転できる。それと同じ原理。私のように小さい体(156センチ)で割と軽ければ、体の軸がブレにくく、回転軸も取りやすいと思います。体重が増えることで、回転速度が必要になるスピンにも影響が出ます」
近年はロシアの10代若手女子選手が次々と4回転ジャンプに成功。もちろん、本人の能力やスケート靴性能の向上もあるが、もう一つ大きいのは体重が軽い時に成功させていること。15歳で平昌五輪金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワは以降、急激に身長が伸び、スランプに陥った。
「身長が伸び続けるとスタイルが良く、見映えも美しいですが、体重は身長と共に増えてしまいます。そうなると、ジャンプの面では身長の高い選手は軸を取るのに苦労すると思います。一方で体重が増えてもスケーティングの深み、味わいが出る、ディープエッジに乗りやすいメリットもあり、一概に痩せればいいわけでもありません。痩せすぎて女性としての魅力を失う選手も見て来たので、痩せすぎても太りすぎてもいけない、難しいバランスを求められます」
中野さん自身も現役時代は体重との闘いだった。初めて意識したのは中学3年生だった15歳。身長の伸びが止まり、食べると体重に影響が出やすくなった。14歳で跳べていたトリプルアクセルが跳べなくなり、ショックを受けた。
「コーチから『とにかく痩せて』と言われていました。ただ、食欲も旺盛な時期で心の中はせめぎ合い。そんな私を見て、母が減量のサポートをしてくれました。今まで好きなだけ食べていたお米をグラムで量り、120~150グラムしか食べないようにしました。甘い物は絶対ダメで、油ものもやめました。『水を飲んだらその分、太ると思いなさい』と言われ……。わりと壮絶でした」