今フィギュア界で起こる陸トレ重視の風潮 鈴木明子「背景に多回転多種類ジャンプ時代」
ジャンプのクセに「テコ入れ」もオフの時期しかできない
新プロに取り組む一方、スケーティングを磨いたり、ジャンプのクセにテコ入れしたりができるのも、オフの時期しかありません。
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クセの修正は非常に時間のかかる作業で、滑ってきた倍の時間をかけないととれないとも言われます。一般の方も、例えば姿勢のクセを治すことは一筋縄ではいきませんよね。ジャンプを例にすると、減点につながる踏切違反や回転不足を取られやすいクセを修正したい、と考えたら、それこそ五輪シーズンに向けて、4年間かけて取り組んでいきます。
また、新しいジャンプを跳びたい場合も、オフシーズンの練習が最も重要です。
跳んだことのないジャンプをシーズン中に取り組むことは、ものすごく難しいチャレンジです。ジャンプとケガは常に隣り合わせ。ですから、オフにトライし続けてきたものの、成功に至らなければ、シーズン中はいったん、練習をストップする場合もあります。
もちろん、チャレンジを続けることで、翌シーズン、できるようになるという可能性もあります。でも、その年の目標によっては、ケガのリスクを背負って練習を続けるよりも、今、跳べるジャンプの精度を上げる方針にシフトする決断も必要なのです。
シーズンの目標――例えば、その年の世界選手権の代表を掴むため、今、結果を残すのか。それとも、五輪シーズンに照準を合わせ、トライし続けるのか。競技者としては非常に難しい判断ですが、自分とコーチの考え方や目標によって、その選択は変わってきます。
さて、コロナ禍に見舞われた昨年から、世界のトップスケーターがリンク上だけでなく自宅や陸上で行うオフアイストレーニング(以下、陸トレ)の様子をSNSで配信するようになり、ファンの間でも話題になりました。
体幹トレーニングや筋力トレーニング、バレエやダンスレッスンといった陸トレもシーズンオフに力を入れるトレーニングです。
スケートの技術は氷上で滑らないと身に付きませんが、陸トレは技や体の使い方の精度を高める補強トレーニングになります。例えば、股関節の使い方や柔軟性を上げることは、スピンの質を高める、バリエーションを増やすことにつながりますし、筋力アップはスケーティング時のポジションを維持する、ジャンプをより高く跳ぶことなどにつながります。