選手の心の不調問題、休養した競泳・萩野公介は世の中に願う 人にも、自分にも「優しく生きて」【世界水泳】
指導者、家族など悩む選手の周囲はどうすれば「肯定と待つことです」
――人に優しくいることは簡単なことでしょうか。
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「簡単なこと……いや、僕はむしろそれしかできないです。もしかしたら、性格によっては誰かにマイナスなことを言って、『ああ、スッキリした』という人もいるかもしれません。あまり僕はそういうのがないタイプ。でも、誰かにマイナスなことをするのは、結局ブーメランとしていつか自分に必ず戻ってくる。いつか自分が苦しむので、僕は基本的に他人にも優しくしようと思っています。
性格は先天的なものと、後天的なものがあると思います。先天的に持って生まれたものはもう変えられない部分が多い。後天的に得られた部分は経験から勉強したこと。アスリートならその競技から教わったものがあると思うんですよ。僕だったら水泳からたくさん教わりました。後天的な経験はたくさんできると思うので、その経験からしっかり敏感に捉える。自分の中で吸収して『自分になる』のが凄く大事なこと。いろいろ経験することが大切です」
――指導者、選手仲間、家族など、悩んでいる選手の周りの人たちはどうしたらいいのでしょうか。助けてあげたい気持ちはあると思います。
「『肯定』と『待つこと』ですね。できることはそれしかないと思います。特に僕は平井先生にずっと待ってもらっていました。そこから知ったのが待つことの重要性。『こうした方がいいんじゃないか』とすぐにパスを出さないで、選手が気づくまで待つ。そして、もし話してくれたら『そうだね、そうだね』って肯定する。とても大事だと思います。
だから、僕は基本的に人のことを否定しません。『否定=お前は違う』と言うようなことだと思うので、僕はどんなことでも基本的に否定しないですね」
――世界水泳では解説者として活動されます。大会を通じて発信したいことはありますか。
「『水泳って面白いよ』ということと、水泳だけではなく『アスリートって本当に頑張っているんだよ』ということですね。だからといって、皆さんが『自分はアスリートじゃないから』と思う必要はありません。
例えば、『大学で一生懸命に頑張ってやっていたけど……』『中学で諦めちゃって』とかそういう子もいると思うんです。いろんな人がいるけど、みんなが『生きているだけで二重丸』だと思います。みなさんも自分に優しく、みんなに優しく生きてほしい。優しい世の中になったらいいなって、常日頃から思っています。
(世界水泳の仕事は)素敵なご縁だと思いますし、いろいろな方とお会いする機会も増えた。だから、いろんなものに対して敏感に考えて見ていきたい。最初の話に戻りますが、花が咲いていて『綺麗だな』と思うか思わないか。それはその人に委ねられている。だから、小さなものでも見逃さないで感じていきたいです。
想いを言葉にするのは凄く難しいです。Aを言っても、A’に捉える人、A”に捉える人がいて、人によって言葉の受け取り方は違うと思います。その違いを『あいつは自分と違うから、えい!』って遠ざけるのではなく、違うことを尊重すること。それが大事だと思いますね。人それぞれの色があるので、その色を大事にしてほしいです」
(18日の第29回は三井愛梨が登場)
◆世界水泳 7月14日にアーティスティックスイミング(AS)、飛込から開幕。水球、オープンウォーター、ハイダイビングも行われる。同23日に開幕する競泳は、決勝をテレビ朝日系地上波にて最終日まで8夜連続生放送。ASはBS朝日、飛込はCSテレ朝チャンネルで生放送。
■萩野公介 / Kosuke Hagino
1994年8月15日、栃木・小山市生まれ。28歳。生後6か月で水泳を始め、作新学院高を経て東洋大に進学。2012年ロンドン五輪400メートル個人メドレー銅。13年日本選手権では史上初の5冠達成。16年リオ五輪は個人メドレーで400メートル金、200メートル銀、800メートルリレー銅。21年東京五輪は200メートル個人メドレーで6位入賞。五輪後に現役引退。22年4月に日体大大学院に進学し、体育科学研究科文化社会学コースでスポーツ人類学を専攻。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)