ロシアで厳命された100g単位の体重管理 フィギュアと新体操に共通する女子選手の課題【鈴木明子×皆川夏穂】
フィギュア界の暗黙の了解「生理がくる=難しい時期がやってくる」
皆川「それは皆さん、暗黙の了解というか同じように思っていたんですか?」
鈴木「そうですね、当時はコーチや親も『生理がくる=難しい時期がやってくる』と捉えていましたし、それを知っているから、私も生理が始まったときは嬉しくなかったんです。でも、成長期に伴う体重の変化はトレーニングによってカバーできます。宮原選手も、すごく細くてしなやかな、いい筋肉がついていますよね。また、私が摂食障害という病気があっても長く、現役生活を送れたのって、やっぱりジュニア時代に基礎を大切にして、やり込んできたからこそだと思うんです。
例えば、成長期に入り、一時的にジャンプが不安定になったときに『痩せなさい!』という方向ではなく、成長していく体に添ったトレーニング跳び方を考える。だけど、今の若い選手は土台がしっかりしないうちから、どんどん難しい技術を積み上げていくイメージがあります。今跳べる人を作るのではなく、成長してからも跳べる基礎作りがすごく大事だと思っています。そうでなければ、一瞬輝く選手で終わってしまう。細さもある程度必要、でも体の成長もポジティブに受け入れられるよう、指導者や親もどっしり構えて見守ることが重要ですよね」
(後編へ続く)
■鈴木 明子 / Akiko Suzuki
1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。
■皆川 夏穂 / Kaho Minagawa
1997年8月20日生まれ。千葉市出身。4歳から新体操を始める。13年、フェアリージャパンの特別強化選手として、ロシアへ新体操留学。15年の世界選手権では個人総合15位となり、16年リオデジャネイロ五輪の個人総合出場を決める。17年世界選手権では種目別フープで銅メダルを獲得。日本の個人選手として42年ぶりの表彰台となった。20年12月、筋腱神経組織が壊死するコンパートメント症候群の悪化により右足を手術。21年6月、東京五輪代表選考会に臨むが出場権を逃し、同年10月、現役引退を表明。現在指導者を目指す。
<3月6日に「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント開催>
女子選手のコンディショニングを考える「女性アスリートのカラダの学校」を本日開催。第1部は「月経とコンディショニング」をテーマに元陸上日本代表・福士加代子さんをゲストに迎え、月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授が講師を担当。第2部は「食事と健康管理」をテーマにボクシング東京五輪女子フェザー級金メダリスト・入江聖奈をゲストに迎え、公認スポーツ栄養士の橋本玲子氏が講師を担当。1、2部ともにアスリートの月経問題などについて発信している元競泳日本代表・伊藤華英さんがMCを務める。参加無料。応募は「THE ANSWER」公式サイトから。詳細(https://the-ans.jp/event/224770/)。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)