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いまだ燻る女性アスリートのメイク批判 叩かれた選手の本音「当人もバッシングする側も…」――パラ陸上・中西麻耶

中西にとって17年世界パラ陸上が競技者として転機に【写真:松橋晶子】
中西にとって17年世界パラ陸上が競技者として転機に【写真:松橋晶子】

初出場した世界パラ陸上選手権ロンドン大会が競技者としての転機に

 その後、避けていた日本に帰国。地元・大分に拠点を移し、競技を再開する。次の2016年リオデジャネイロ大会にも出場し、メダルまであと一歩に迫る、4位の成績を残した。

 そして翌2017年。初めて出場した世界パラ陸上選手権ロンドン大会が、競技者としての転機となる。

 プロとして競技を続ける中西は、相変わらず活動資金の確保に苦労していた。実はこの年まで、出場費を払うことができず、世界選手権に出場できなかったのだという。

「いつも大会の結果をネットで見ては、その年の自分の記録と比較して、『出場していたらメダルが獲れたのにな』と、ただ眺めることしかできませんでした。『もしも、世界選手権に出ていれば何位相当でした』なんて存在しない世界の話。自分の商品価値を明確に提示できないから、スポンサーを探そうにも相手にされず、ずいぶん悔しい想いをしました。

 ただ、人が置かれる状況は、自分自身が作るものでもあると思います。もっと自分が頑固にならず、譲れたり器用にやれたりすれば、資金繰りに振り回されなかったこともなかったとも思っています」

 堂々巡りの状況は、精神面に及ぼす影響も大きかった。当時、激しいバッシングに合うこともかなり減っていたが、長年、批判の声に晒され続けていた彼女は、すっかり自信を失っていた。

「自信が持てないとき、周りから『お洒落ばっかりしてるから集中できていない』と言われ続けると、その言葉のほうが正しく聞こえてきちゃうんです。だから、本当はもっと集中できるんではないか、自分はメダルを獲るに相応しい選手ではないんだと、自分を否定し続けていました」

 迎えた世界選手権、当日。やっと立てた舞台だったが、記録はなかなか伸びなかった。当時の自己最高記録は5メートル48。最後の跳躍を前にメダルに必要な記録は5メートルだと知った。「いつも通りの実力を出せばメダルは獲れる」。コーチに叱咤激励、鼓舞されるなか、「あ、私、怖いんだ」と気づいた。

「ネット上で順位を見積もることはしても、自分を信じ切れていないし、この舞台に立つことをどこかで怖がってたんですね。だから最後のピットに立った時に、私だってこれまで頑張ってきた。今日ぐらい表彰台に立ったっていいじゃない! と自分を奮い立たせました」

 そして跳んだ6本目は、なんと5メートルジャスト。3位になり、人生初のメダルを決めた。

「欲しくて欲しくて、たまらなかったメダルを手に入れて、その日までのいろんな悔しい想いがすべて報われた気がしました」

 初のメダルを獲得したのは、奇しくも、引退を決意したロンドンパラと同じ会場。「これからはどんどん、メダルにふさわしい選手に成長していける」。そこで結果を残せたことが自信になった。

 2年後の2019年、世界パラ陸上選手権。中西は女子走り幅跳びで、ついに世界の頂点に立つ。

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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