小学生の従妹に「男と女どっちなの?」と聞かれ トランスジェンダーの大学院生が伝えた言葉
「満月は男と女どっちなの?」と何度も聞いてきた小学生の従妹に伝えた言葉
須永「誰かが勇気と覚悟を持って、世間に向かってカミングアウトする必要がある。そのことに対しての残念な気持ち、でしょうか?」
山田「はい。以前、小学生の従妹から『満月は男と女どっちなの?』と何度も聞かれました。そのとき、小学生からすでに『男なのか女なのかをはっきりしたい』という考えが『当たり前』なんだなと感じました。そこであるとき、『それを聞いたところで何になるの?』と質問すると、しばらく考えた後、『別に何もならないね』と彼女。私が『そうであれば、聞く意味はないんじゃない?』と返すと『確かに!』と答え、その時を境に、何も聞かなくなりました。
自分が従妹に対してそう質問したのは、小さな頃から人と接する際、男だから、女だからではなく、目の前の『その人』に対して何を感じるのかを捉えたうえで、関係性を築いてほしいという想いがあるためです。これは男女の区別だけに限りません。いろんなことを決めつけないで、一人ひとりと接する気持ちを大切にして欲しいなと考えます。
男と、女と、LGBTと、はっきりとわからない人と、と、性のカテゴリーはいっぱいあります。シスジェンダー(法律上の性別と性自認が一致している人)の方が私は男です、女ですとわざわざ言わないように、誰もが何も聞かれなくても、『あの人はそう(LGBT)かもしれない』などと気にされなくてもよい社会になればいいなと考えています」
須永「そうですね。これまでの社会は限られた人々の価値観で物事が決められてきました。スポーツ界も今、性のあり方に限らず、パラアスリート、女性アスリート、人種と、多様性を認める社会に向け、まさに過渡期にあると感じます。誰かのカミングアウトすることがニュースにならないようなインクルーシブな世界を、皆で築いていきたいですね」
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)