避けられない生理、胸をつぶして着けた下着 あるトランスジェンダーの大学院生の経験談
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。今回のテーマは「トランスジェンダー」。東京五輪でも、スポーツ界でも注目されることが増える昨今。須永先生が、トランスジェンダーである教え子の大学院生と対談。今回は前編をお届けする。(取材・構成=長島 恭子)
連載「女性アスリートのカラダの学校」
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。今回のテーマは「トランスジェンダー」。東京五輪でも、スポーツ界でも注目されることが増える昨今。須永先生が、トランスジェンダーである教え子の大学院生と対談。今回は前編をお届けする。(取材・構成=長島 恭子)
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トランスジェンダーとは、体と心の性が一致しない方を指します。
ここでいう体の性とは法律上の性別、心の性とは性自認(自分の性別をどのように認識しているか)を指します。スポーツ界では、東京五輪でウエイトリフティング女子87キロ超級に出場したトランスジェンダーのローレル・ハバード選手(ニュージーランド)が注目されました。ほか、女子サッカー・カナダ代表のレベッカ・クイン選手、同じく女子サッカーの横山久美選手(NWSL/ゴッサムFC)もトランスジェンダーであるとカミングアウトしています。
東京五輪では、特にハバード選手は世界的なニュースとなり何度も報じられ、SNS上では「元男性が女性の競技に出場するのは不公平ではないか」とか、「ずるい」という感覚的な反発の声も少なくなかったことも事実です。LGBTの方と接する機会がないと、理解が難しかったり、取り巻く問題について考える機会が少なかったりします。しかし、多様性が強く叫ばれる今、これらの問題は「知らなくて当たり前」ではなく「積極的に知っていこう」というスタンスが大事です。
そこで、今回は2回に渡り、トランスジェンダーの方と対談。思春期の頃に感じていたことや、性転換治療についての話をお届けします。インタビューに答えてくださったのは、現在、日体大大学院の私の研究室に所属する山田満月さんです。山田さんは自身がトランスジェンダーであることを身近な人たちに公表しています。では、対談に入りましょう。
須永「山田さん、今回はありがとうございます。まずは簡単に自己紹介をお願いいたします」
山田「日本体育大学大学院博士後期課程に在学中の大学院生です。現在、須永研究室に所属し、女性から男性への性転換の治療を受けている方々を対象に、シスプロファイル(健康診断で測られる様々な数値)の変化について、研究を行っています。自分はFtM(Female to Male)、またはトランスジェンダー男性(TM)といって、生まれたときに割り当てられた性別は女性、性自認は男性です。恋愛対象は女性です」
須永「山田さんはいつから『女性であること』に違和感を覚えましたか?」
山田「小学校に入学する前から違和感はありました。ただ、はっきりと認識したのは高校生の時です。FtMの同級生と出会い、『自分もそうかもしれない』と考え始めました。彼は自分よりもトランスジェンダーに関する知識があったので、いろいろと教わったと記憶しています」