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出産した女性アスリートの実体験 夜中の授乳なく「すごく親孝行」、困るのは合宿中の預け先――レスリング・金城梨紗子

東京五輪で連覇を達成した金城【写真:Getty Images】
東京五輪で連覇を達成した金城【写真:Getty Images】

今、あったらいいなと思うのは「合宿中に保育士さんをお願いできる制度」

 レスリングの練習に入ったのは、産後2か月後。そして半年後から、通常のトレーニングに戻った。以降は東京五輪前のトレーナーが組んでくれたメニューを続けている。

「やはりすごく消耗するスポーツなので、産後2か月目からどんどん体重が落ちていきました。だけど、アスリートの体には筋肉が必要。糖質やタンパク質もしっかり摂るなど、食事には気を付けました」

 出産で里帰りしていた実家から福井県へと戻ってきたのは、産後3か月目。実家にいる間、長女は朝晩問わず、2時間と寝ることはなかったという。母親の助けがあったものの、当時は眠れない毎日が続き、「レスリングを続けたいなんて言ってはいられない」とも思った。

「ところが、福井に戻った晩、娘は初めて、ぐっすりと眠ったんです。ママを助けてあげなきゃと思ったのか、以来、何かを察したかのように(笑)夜、眠るようになり、夜中の授乳の回数が急に減りました。今では夜中に授乳することもなく、すごく親孝行してくれています」

 1日のスケジュールは日によって異なるが、2部練習の日は朝8時半に子どもを託児所に預け、午前中に1時間半~2時間、ジムでウエイトトレーニングを行う。16時半の迎えの時間までに、掃除、洗濯、夕飯の準備を整えた後、子どもとともに、同じレスリング選手の夫・希龍さんが勤める高校へ。19時から地元のちびっこレスリングクラブが練習する隣で、希龍さんを相手にマット練習を行う。

「練習中は、ちびっこクラブに通う子どもたちの保護者の方が、娘をみてくれています。だから、何の心配もせずに練習に集中できる。本当にありがたいです」

 母になり、最も難しさを感じるのは練習量の確保だ。レスリングは持久力も瞬発力もいるスポーツ。体力があり、練習量も詰める若い選手に勝つためには、自分に厳しくするしかない、と話す。

「今、女子レスリング界は若い選手がたくさん出てきて、恐らく、全日本に出場した女子選手のなかでは、私が最年長です。今の自分には、限りある時間のなか、練習やトレーニングを120%やりきる意志を持って取り組むことがすごく大事。100%では足りません。ただ練習の頻度が減り、東京五輪まで抱えていた腰痛がなくなり、腰の調子はすごくいい。今のペースのほうが、体に合っているのかなと思うぐらいです」

 もう一つ、母親となったアスリートが苦心することは、合宿や遠征時の子どもの預け先だろう。金城も現在、月1回、1週間の全日本の合宿に参加している。ただし合宿は東京近郊で行われることが多く、娘はやむを得ず実家に預けている。

「今、あったらいいなと思うのは、合宿中に子どもをみて頂ける保育士さんをお願いできる制度です。例えば、JISS内にも託児所はありますが、練習中だけしか預けられないため、合宿となると難しい。それから、産前産後の体の相談ができる場所。東京にはJISSがありますが、私のように地方を拠点にする選手は、すぐに相談に行ける場所がなかなか見つかりませんから」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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