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世界一になった“闘う医学生”の涙 「まさに死ぬ気で…」低い自己肯定感、自分を変えた薬理学の講義――柔道・朝比奈沙羅

朝比奈にとって、悔しさは原動力だという【写真:荒川祐史】
朝比奈にとって、悔しさは原動力だという【写真:荒川祐史】

競技も学業も「周囲が思うほどの成功体験はない」

 悔しさは人生の節目、節目で原動力となった。人生で最も悔しい思いをしたのは、2017年の世界柔道選手権。78キロ超級決勝で負けたその日から、結果を塗り替えたい一心で柔道に向かい、翌18年に同大会で金メダルを獲得。見事、雪辱を果たした。

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「負けた日から389日、1日1日をカウントしながら、生まれて初めて死ぬ気で頑張りました。それだけに優勝した時は、本当に嬉しくて。それまでの日々が、走馬灯のように頭に浮かびました」

 一方、どれだけ頑張っても「結果を出している」という手応えは常に感じられなかった、という。

「自分は昔から自己肯定感が低いのだと思います。国際大会で戦績を残しても『こんなんじゃダメだ』といつも思っていたし、学業にしても、たぶん周囲が思うほどの成功体験はありませんでした」

 しかし昨年初めて、その思いが変化する出来事があった。

 薬理学の講義で、グループに分かれて行うロールプレイングを行うことになった朝比奈は、医師の役と診察の場面を想定した台本を担当する。

「薬のことはもちろん、接遇――例えば、一方的な説明ではなく患者さんの気持ちを汲んで納得していただきながらも嫌な気持ちにさせずに帰してあげるかなど――これらについて、下調べをしながら台本を制作。これが大変な作業で、まさに死ぬ気で取り組まなければならない内容でした。そうしたら、課題の最後に学生の中から自分がMVPに選ばれた。同じグループの仲間が選ばれたらすごくいいなと思いながら取り組んでいたのに、自分がもらえて……。すごく嬉しかったですね」

 当時の気持ちを思い出したのだろう。言葉とともに、涙が目にあふれた。

「人から見たら、小さなことかもしれません。でも、自分にとっては18年の世界柔道と同じぐらいの気持ちで頑張った。以前は『楽をして結果が出れば、一番いい』とさえ思っていたけれど、今回評価されたことで、頑張るのっていいなって初めて思いました」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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