体重70kgのぽっちゃりOLが10か月で日本一 コンプレックスの塊だった人生に30歳で訪れた転機――ビキニフィットネス・安井友梨
原動力は「コンプレックスだらけの自分を好きになりたい。だから頑張る」
もともと身長173センチに長い手足。コンプレックスに隠されたものを武器にすると、素質は開眼した。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
「まさか日本一になれるなんて思っていませんでした。無我夢中で、何だか分からないまま(大会直前の)減量期は鶏のささみとブロッコリーを食べ続けて(笑)、先生の言うことだけ聞いていこうと。分からないがゆえにすごく素直に、がむしゃらに走り抜けた10か月でした」
ひとつ、貫いたことがある。
柏木トレーナーのススメで、ジムに入門したその日からブログを始めたこと。指定されたタイトルは「ビキニフィットネス大会優勝への道」。2014年11月30日、初投稿は3行ほどの短い文章と数枚の写真。これから待つ挑戦の日々に決意をつづった。
「いきなり『優勝への道』って書くなんて、やりたくないですと言ったら、書かないとジムに入れませんって(笑)。でも『君が書くことで、これが教科書のようになり、後に続く誰かの役に立つ時が必ず来る。自分が減量でつらい時も支えになるから』と背中を押してもらいました」
最初の読者は、父と母と妹と弟とトレーナーの身内5人。「5いいね」が読んでくれた証しだった。ところが、どこにでもいるOLが大それた目標を掲げ、挑戦をつづる様子が目に留まり始め、大会で優勝する頃には読者は数千人に。今も連日更新し、人気ブログとなっている。
もともと、ネガティブな人間だった。何をやっても失敗ばかりで長続きしない。いつも誰かと自分を比べ、いつも最悪のことを想定し、行動できない。たった1年前までラーメンを食べ、左右違う靴下も当たり前だった女性が、日本一になった。
以降、外資系金融のOLとの“二刀流”で仕事と競技に奮闘。分刻みのスケジュールを日々送りながら、35歳でアジアチャンピオンになり、37歳で世界選手権準優勝。いつしか「ビキニフィットネスの絶対女王」と呼ばれ、競技の「顔」になっていく。
安井の経験が教えてくれるのは、変わりたいという気持ちを持つこと。そして、失敗してもいいから一歩踏み出してみること。チャレンジに遅すぎることはない。本人は「初めて優勝した日に見た風景とその感動は、今も忘れられません」と実感を込める。
「コンプレックスだらけで自分を好きになれない。好きになりたいから、頑張る。その気持ちが原動力でした。高校生・大学生の時も社会人の時も、早く大人になりたい、早く30代になりたかった。今の自分はイヤって否定して、自分のコンプレックスと向き合えなかったから。
30歳まではなんの取柄もないぽっちゃりOLで、何ひとつ秀でるものがない。“虫歯ゼロ”くらいしか表彰されたことがありません。でも、ビキニフィットネスと出会って初めて自分を好きになれた。私は“何もできない”から“何でもできる”という思考に変わったんです。
昨日できなかったことが今日突然できて、先週1回しかできなかったことが今週10回できて、『できる』の心が育っていく。人生最高の瞬間は未来にしかない。去年より今年の方が絶対に良いし、今日より明日、なんなら今日の朝より今日の夜の方が自分は絶対進化すると思えるんです」
人生を変えたビキニフィットネス。しかし、安井にとって、日本一の喜びは苦悩の始まりでもあった。
(後編「世界一細いと評された53cmの究極ウエスト 日本人不利に抗い、世界と戦うビキニの女王の哲学」へ続く)
■安井 友梨 / Yuri Yasui
1984年1月13日生まれ。愛知・名古屋市出身。幼少期のスポーツ歴はソフトボールとバレーボール。大学時代は和菓子好きが高じて茶道部。30歳にビキニフィットネスと出会い、競技歴10か月で出場した2015年からJBBFオールジャパンフィットネスビキニ選手権7連覇中。外資系金融のOLをしながら、2019年アジアビキニフィットネス選手権優勝、2021年から世界フィットネス選手権2年連続準優勝。同年元日のTBS系「マツコの知らない世界」に年1200個食べる「おはぎ好き」として出演し、話題に。以降、数々のバラエティー番組やフィットネス番組に出演。2022年11月にはTBS系「情熱大陸」で特集された。今年1月に勤務していた外資系金融が日本事業撤退に伴い退職。新たなキャリアを模索している。
ブログ(https://ameblo.jp/yuriyasui/)
インスタグラム(https://www.instagram.com/yuri.yasui.98/)
ツイッター(https://twitter.com/yuriroraolive)
<3月5日「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント開催>
オンラインイベント「女性アスリートのカラダの学校」を3月5日に開催する。アスリートや専門家が女性アスリートのコンディショニングについて議論を交わしながら、参加者の質問にも答える。第1部は「月経とコンディショニング」をテーマにスポーツクライミング東京五輪銅メダリスト・野口啓代さんをゲストに迎え、月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授が講師を担当。第2部は「食事と体重管理」をテーマに体操でリオデジャネイロ、東京五輪2大会連続団体入賞の杉原愛子さんをゲストに迎え、公認スポーツ栄養士の橋本玲子氏が講師を担当。1、2部ともに月経など女性アスリートの課題を発信している元競泳日本代表・伊藤華英さんがMCを務める。参加無料。応募は「THE ANSWER」公式サイトから。詳細(https://the-ans.jp/news/304085/)
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)