なぜ米国の女子アスリートは発言し続けるのか 根底にある「マイノリティ改善」の想い
アメリカに根付く自己主張の文化、反発を受けても続ける発言
少しでも米女子ゴルファーの環境と価値観を向上させたい――。ルイスの目的意識は明確だ。だからこそ、発言し続ける。
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米女子ゴルフツアーに参戦するメル・リード(英国)もまた、積極的に発言する1人だ。リードは昨年、レズビアンであることを告白した。「私がどうこうしたいっていうんじゃなくて、レズビアンの友達が周りから理解を得られず悩んでいたんです。だったら、私が公表してみようかなと」。リード自身は公表して変わったことはないと言う。
「『みんなと同じでなくてもいい』ということを伝えたかっただけ。人それぞれ違いがあることを理解してくれたら嬉しいかな」。発言力のあるプロアスリートが性的マイノリティの思いを代弁した。
忘れてならないのは、アメリカには自己主張の文化があることだ。
アメリカでは、幼稚園の頃から自分の好きなものについて人前で発表する場を設けられたり、大学ではパブリックスピーキングを必須科目とするところもある。また、会社である程度の役職に昇進すると、スピーチの練習が課されるという。アメリカでは、人前で堂々と自分の意見を言うことが文化として根付いているのだ。
公の場で自己主張すれば、時には物議を醸すこともある。
ルイスは13年に中国で開催された試合で、地元のフォン・シャンシャンに逆転優勝された。試合後に自身のツイッターで「観客のカメラのシャッター音がするし、私がミスすると拍手をしていた。中国のファンはマナーが悪い」と痛烈に批判した。すると、すかさず世界のゴルフ関係者やファンから反発を受けた。「中国のゴルフはこれから発展するから、もっと温かい目で見守ってあげるべき」、「いつもアメリカでは温かい応援を受けているじゃないか。たまにアウェーになったくらいで気分を害さないで」といった声を受け、いたたまれなくなったルイスは一時、ツイッターでの発信を止めた。
世間から反発を受けることもある。それでも彼女たちは、意見を言い続ける。発言することで、良い方向に向かうと信じているからだ。
女子ゴルフツアーが発展したのは、選手の意見を真摯に受け止めて、受け入れる人がいたからである。「スポンサー、大会関係者、ファンらが女子ゴルファーのことをプロのアスリートとして認めてくれてきた証拠だと思ってます。私たちのことを信じてくれて本当にありがたいです」と、ルイスは支えてくれた人々に感謝する。
男子に比べると、パワーやスピードは圧倒的に足りない。「コンテンツとして魅力がないから、女子スポーツの方が不人気となるのは当然」という意見もある。だが、スポーツの醍醐味は、研ぎ澄まされた心身を持つアスリートの真剣勝負から生まれる筋書きのないドラマである。そこに性別は関係ない。
覚悟を持って発言する女子アスリートの姿は、アスリート以前に一人の大人として潔い。
(南 しずか / Shizuka Minami)